いま関西の司法記者の間で、「公判はいつなんだ」と話題の事件がある。今年3月、兵庫県西宮市のマンションに住む主婦(48)が、有毒のメタノールを混入させた酒を夫(59)に飲ませ、死亡させた。夫婦は甲子園球場近くの500世帯が住む巨大マンションに家族3人で住んでいた。夫婦は再婚で、妻には連れ子の大学生がいたという。
「奥さんは上品な感じで、ご主人も真面目そうだった。夫婦で近所のスーパーに買い物に行く姿を見たが、事件になるとは思わなかった」(マンションの住人)
周囲には仲の良い家族に見えたが、兵庫県警の捜査関係者はこういう。
「夫は事件当日、外出先で体調異変を訴え、神戸市の病院に顔面蒼白で駆けこんだそうです。医師に吐き気とめまいを訴えたあと意識を失った。総合病院に転送され、血液検査からメタノール中毒の疑いが出たことで警察に届け出た。
捜査員が病院に向かったが、夫が勤めるIT企業ではメタノールを使用しないことから妻を事情聴取したところ、素直に“夫が飲む酒に燃料用アルコール(メタノール)を混ぜた”と自供。ただちに殺人未遂で逮捕した。
その後、夫が多臓器不全で亡くなったため、容疑を殺人に切り替えて送検しました。ところが妻は混入を認めたものの、一貫して殺意を否定しており、そのため神戸地検は傷害致死で起訴した。殺人容疑ではなかったのは、殺意を立証できないのではないかとの判断があったようです」
外出先で体調異変を訴えるまでの数日間で、夫の2リットルの紙パック入りの日本酒を数日間にわたって飲んでいたという。自宅では日本酒だけでなく、ウイスキー、焼酎など他の酒からもメタノールが検出されている。メタノールは無味無臭で、酒に入れても色や味に変化はない。日々の蓄積による中毒症状だったとみられている。
「離婚の話は出ていたそうですが金銭トラブルや異性問題などの動機がなく、妻は“夫の日常的な態度に腹が立った”としか語らない。“こんなことで死ぬとは思わなかった”などと殺意を否定しています。夫が死んだことを知っても妻は大きく泣き崩れることもなく、反省も口にせず、淡々と取り調べに応じていた」(同前)
妻の出す酒には要注意。
※週刊ポスト2016年6月10日号