国民的テレビアニメ『サザエさん』一家の30年後をシミュレーションした新書『カツオが磯野家を片づける日』(著者は実家片づけアドバイザーの渡部亜矢氏)が話題を呼んでいる。
舞台設定はこうだ。20XX年、アニメでは54歳だった波平が84歳で他界した。妻のフネは認知症の症状が出始め、磯野家はゴミ屋敷と化してしまう。そして41歳になって地方赴任から戻ってきた長男のカツオが“実家の片づけ”という難題に直面する。
なお、サザエ(54)は実家近くにマイホームを購入。夫のマスオ(58)、長男のタラオ(33)とともに移り住んだが、ローンの支払いが苦しく、家計を支えるべくコンビニでバイトする毎日。
定年目前のマスオは、大阪に住む実母が認知症を患ったためたびたび帰省せねばならず、磯野家に顔を出せない。結婚して2児の母となったワカメ(39)は職場復帰し、実家のことにはノータッチ。結局、独身のカツオが一人で実家の片づけを背負うという設定だ。
家の片づけに加え、相続も難問だ。サザエは、「相続税ってお金持ちの話で、うちは関係ないんじゃないの?」と呑気に構え、カツオもそう考えていた。しかし、2015年1月の法改正が磯野家に立ちはだかる。
改正前は相続する財産が「5000万円+法定相続人の人数×1000万円」まで、つまり磯野家ではフネ、サザエ、カツオ、ワカメの4人が法定相続人なので波平の財産が9000万円以下なら相続税がかからなかった。
しかし、改正後はそれが「3000万円+法定相続人の人数×600万円」となったのだ。磯野家の場合5400万円を超えた分が課税対象となる。
築50年のボロ家とはいえ、世田谷区にある磯野家の土地評価額は1億2000万円。「じゃあ、1億2000万円-5400万円=6600万円分に対する税金を払わなきゃいけないの?」とカツオは呆然とする。
だが、磯野家には使える特例制度もいろいろある。
「ひとつは『小規模宅地等の特例』。330平方メートルまでの小さな宅地なら、相続評価額が8割減になる制度です。つまり1億2000万円ではなく、2400万円という評価額になる。
また、フネは『配偶者の税額軽減』が受けられるので、1億6000万円までが非課税となる。磯野家の場合、波平の財産が預貯金、不動産などを合わせて1億6000万円以下ならば、フネさんには相続税がかかりません」(リーガル・アカウンティング・パートナーズ代表で税理士の水本昌克氏)
※週刊ポスト2016年6月10日号