伊勢志摩サミットでは中国の海洋進出問題がトピックに挙がるなど不在ながら存在感を見せた習近平・国家主席。その「最高ブレーン」が注目を集めている。
王滬寧(オウ・コネイ)・党中央政治局委員(党中央政策研究室主任)だ。拓殖大学海外事情研究所教授の富坂聰氏の話。
「国際政治が専門の元大学教授で、外交のエキスパートとして各国首脳との会談で習氏の隣にいる。専門家の間では、王氏が同席するかしないかで“中国側が考える会合の重要度を推し量ることができる”とまでいわれています」
昨年4月、バンドン会議(アジア・アフリカ会議)に合わせてインドネシアで開かれた日中首脳会談には王氏は姿を見せなかった。「同じバンドン会議期間中に開かれたインドネシアやミャンマー首脳との会談には王氏が出席していて、その差が“安倍軽視”のサインではと話題になった」(外務省関係者)という。
60歳の王氏は大学教授だった1995年に、当時の江沢民・主席に見出され党中央政治局入り。その後も胡錦濤、習近平と国家主席3代のブレーンを務めた。国家主席経験者同士が熾烈な権力闘争を繰り広げる中国政界でトップに重用され続けるのは異色な経歴だ。2012年以降、習氏が掲げるスローガン「中国の夢」の考案者ともいわれ、存在感は年々増している。『チャイナ・セブン〈紅い皇帝〉習近平』の著者で東京福祉大学国際交流センター長の遠藤誉氏はその人物像をこう話す。
「自らの政治哲学で国家を動かすことに喜びを見出す学者肌の人物です。かつて国家副主席だった習近平氏に向かって“お前は(政治を)何もわかってない。不用意に喋るな”と怒鳴りつけたほど。中国中央テレビは党内序列に沿って行動するが、常に習近平氏の傍にいる王氏は、ナンバー2である李克強首相よりも先に名前が報じられるほどです」
来年秋には5年に一度の党大会が行なわれ、党幹部の人事が発表される。「チャイナ・セブン」と呼ばれる党を動かす政治局常務委員7人に「王氏が入る可能性は否定できない」(遠藤氏)とする声がある。今後の日中関係の鍵を握る人物かもしれない。
※週刊ポスト2016年6月10日号