国内

北海道不明男児保護 ネットで盛り上がった下衆のケジメとは

少年は見つかったが……(写真:アフロ)

 北海道で行方不明になっていた男児(7)が見つかった。このニュースにネットは湧いたが、そこにあぶり出されたものはなにか。大人力コラムニスト・石原壮一郎氏が敢えて指摘する。

 * * *
 近年、こんなにも日本じゅうが心をひとつにしたことがあったでしょうか。無事のニュースを聞いた瞬間、誰もが「ああ、よかった!」と胸をなでおろしました。北海道の山林で6日前から行方不明になっていた小学2年生の少年が、6月3日朝、陸上自衛隊の宿泊施設で隊員に発見されました。行方不明になった場所からは、約5km離れていたとか。健康状態にも大きな問題はないようで、本当に何よりです。

 無事に保護された今だからこそ、行方不明のニュースが流れた5月28日から昨日までのあいだ、私たち「世間」が日常会話で、あるいはネット上で、どれだけ好き勝手なことを言いまくっていたかを省みてみましょう。後出しジャンケンは承知の上ですが、何事もなかったような顔をして、また次の事件が起きたら似たようなことを繰り返すのでは、寒さとひもじさに耐えてがんばった少年に申し訳が立ちません。

 行方不明になった直後は、「躾のために置き去りにした」ということで、両親を激しく責める声が巻き起こりました。とにかくバッシングの対象が欲しい人たちは、詳しい状況やいきさつなんておかまいなしで、「山の中に子どもを置き去りにする」というわかりやすい落ち度があれば十分です。両親がどんなに心配でどんなに激しく後悔しているかを想像するよりも、もっぱら「自分がちゃんとした人間である」ということをアピールしたいがために、「親として失格だ!」「虐待だ!」「外国なら逮捕だ!」と声高に叫びました。

 何日か捜索しても発見されないと、今度は「父親が言っていることは、これこれこういう理由でおかしい」「じつは、こういう真相があるんじゃないか」と名探偵気取りの人たちが、たくさん現われます。きっと、自分の予想がたまたま当たったときに「ほら、俺の言った通りだ」と言うための準備だったんですね。心配してるわけじゃなくて。

 そういうことにも飽きると、どこかで拾ってきたアテにならない情報を元に、父親や母親への人格攻撃が始まります。舛添都知事の気持ちを勝手に想像して「世間の話題がそっちに集まって、ちょっとホッとしてるんじゃないの」と言ってドヤ顔している人もいました。かく言う私も、眉をひそめているような風で書いていますが、事態が進行している最中は、いろんなアピールや推理やゴシップを興味深く聞いたり読んだりしていたので、そういう人たちを非難する資格はありません。

関連キーワード

関連記事

トピックス

幕内優勝力士に贈られる福島県知事賞で米1トンが
「令和のコメ不足」の最中でも“優勝したら米1トン”! 大相撲優勝力士に贈られる副賞のコメが消費される驚異のスピード
NEWSポストセブン
愛子さま
愛子さま、日赤への“出社”にこだわる背景に“悠仁さまへの配慮” 「将来の天皇」をめぐって不必要に比較されることを避けたい意向か
女性セブン
「学園祭の女王」の異名を取った田中美奈子(写真/ロケットパンチ)
田中美奈子が語る“学園祭の女王”時代 東大生の印象について「コミュニケーションスキルが高く、キラキラ輝いていた」
週刊ポスト
羽生結弦(時事通信フォト)の元妻・末延麻裕子さん(Facebookより)
【“なかった”ことに】羽生結弦の元妻「消された出会いのきっかけ」に込めた覚悟
NEWSポストセブン
目覚ましテレビの人気コーナー「きょうのわんこ」(HPより)
『めざましテレビ』名物コーナー「きょうのわんこ」出演犬が“撮影後に謎の急死”のSNS投稿が拡散 疑問の声や誹謗中傷が飛び交う事態に
女性セブン
シャトレーゼのケーキを提供している疑惑のカフェ(シャトレーゼHPより)
【無許可でケーキを提供か】疑惑の京都人気観光地のカフェ、中国人系オーナーが運営か シャトレーゼ側は「弊社のブランドを著しく傷つける」とコメント 内偵調査経て「弊社の製品で間違いない」
NEWSポストセブン
神田正輝の卒業までに中丸の復帰は間に合うのか(右・Instagramより)
《神田正輝『旅サラダ』残り2週間》謹慎中のKAT-TUN中丸雄一、番組復帰の予定なしで「卒業回出演ピンチ」レギュラー降板の危機も
NEWSポストセブン
小泉進次郎氏・滝川クリステル夫妻の出産祝いが永田町で話題
小泉進次郎夫妻のベテラン議員への“出産祝い”が永田町で話題 中身は「長男が着ていたとみられるベビー服や使用感のあるよだれかけ」、フランス流のエコな発想か
女性セブン
稽古は2部制。午前中は器具を使って敏捷性などを鍛える瞬発系トレーニングを行なう。将来的には専任コーチをつけたいという
元関脇・嘉風の中村親方、角界の慣習にとらわれない部屋運営と指導法 笑い声が飛び交う稽古は週休2日制「親方の威厳で縛らず、信頼で縛りたい」
週刊ポスト
柏木由紀と交際中のすがちゃん最高No. 1
《柏木由紀の熱愛相手》「小学生から父親のナンパアシスト」すがちゃん最高No.1“チャラ男の壮絶すぎる半生”
NEWSポストセブン
今年8月で分裂抗争10年目を迎える。写真は六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
「宅配業者を装って射殺」六代目山口組弘道会が池田組に銃口を向けた背景 「ラーメン組長」射殺事件の復讐か
NEWSポストセブン
小泉進次郎元環境相と妻の滝川クリステルさん(時事通信フォト)
滝川クリステルの旧習にとらわれない姿勢 選挙区の横須賀では「一度も顔を見せないのはどうか」の声、小泉進次郎氏は「それぞれの人間性を大事にしていきたい」
女性セブン