Hey! Say! JUMPの伊野尾慧(いのおけい・25歳)が最近、バラエティー番組で活躍中だ。伊野尾が、人気番組に相次いで起用されるのはなぜか? その魅力について、テレビ解説者の木村隆志さんが解説する。
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眠そうな目つき、脱力した半笑いの表情、モコモコの髪型、フワッとした受け答え。バラエティー番組で初めて伊野尾さんを見たとき、「見た目もトークも、モロにゆとり世代だな」「大人層へのウケは悪いだろう……」と心配になりました。
しかし、『天才!志村どうぶつ園』や『ニノさん』に出演した伊野尾さんを見て、その思いを改めました。ジャニーズの先輩である相葉雅紀さんや二宮和也さんだけでなく、大御所の志村けんさん、芸人のハリセンボンさんなど、年齢性別の壁を超えてあらゆるキャストとのトークが成立しているのです。これは、物おじしない度胸と、現場の空気に溶け込むコミュニケーションセンスあってのことでしょう。
さらに驚かされたのは、MCからの急なコメント振りや、番組進行のささいなトピックスに、ほぼ100%の確率でリアクションを返していること。ただニヤニヤ笑っているだけでなく、感心するような仕草や、拒絶のオーバーアクションなど、何気に多彩な反応を返していました。実際、4月からレギュラーとして出演している『メレンゲの気持ち』を見ると、ディレクターが意図的に伊野尾さんのリアクション機会を組み込み、カメラマンが繰り返しとらえている様子がうかがえます。
特筆すべきは、芸能界の先輩方に愛されていること。特に伊野尾さんを見る相葉雅紀さんや久本雅美さんの視線は優しく、ゆとりキャラを生かすような強めのツッコミを何度も入れていました。そんな「先輩が後輩を生かそう」というムードはスタッフにも伝わり、「伊野尾くんがいいコメントをした」「今日もいい表情をしている」という評価が広がり、活躍の場が増えるのがテレビの世界です。
そうしたムードに恐縮することなく、無邪気に自由な振る舞いを続ける伊野尾さんは、女性視聴者にしてみれば「この子、かわいい」という愛らしい存在、男性視聴者にしてみれば「コイツ、憎めないやつだな」という弟のような存在。25歳という若さを生かした独自の存在感で愛される、テレビ業界にとって新たなタイプのタレントと言っていい気がします。
幅広い年齢層が視聴する『めざましテレビ』へのレギュラー出演に加え、さらなる飛躍のポイントは俳優業。7月からの連ドラ『そして、誰もいなくなった』と、大ヒットドラマ『ドクターX~外科医・大門未知子~スペシャル』への出演が決まり、さらに、来年公開の映画『ピーチガール』では主演を務めることが決定しています。
伊野尾さんは2014年の『なるようになるさ。』では、連ドラ初出演にも関わらず、橋田壽賀子さんの長ゼリフをこなすなど非凡なところを見せました。SMAPや嵐のような国民的人気を得るためには、歌やバラエティーだけでなく、俳優業での成功は欠かせないだけに、順調な道のりを歩んでいる様子がうかがえます。
そしてもう1点、伊野尾さんについて触れなければいけないのは、明治大学理工学部建築学科をストレートで卒業した理系インテリであり、学業とアイドル業と並行して行っていた努力家であること。伊野尾さんは、耳を隠したガーリーな髪型をよくネタにしていますが、隠していたのは頭の良さであり、「テキトー王子」というニックネームもごく一部の姿に過ぎないのです。
今後、学歴や努力家であることが浸透する度に、ふだんの振る舞いとのギャップが生まれ、「ただのゆとりキャラじゃないんだな」というイメージが定着していくのではないでしょうか。
現在、伊野尾さんはアイドルのファン層から抜け出して、全世代への認知度を高めているところ。レギュラー番組が2本増えた今年の春に助走のスピードを上げた分、秋から冬にかけて、一気にお茶の間の人気者になる可能性を秘めています。
Hey! Say! JUMPの中でも地味な存在だった伊野尾さんが、今やグループのトップどころか、芸能界のトップシーンに躍り出たら……。私はジャニーズのファンではないですし、太鼓持ちをするつもりはありませんが、伊野尾さんならそんなサクセスストーリーを見せてくれるのではないか、と期待しています。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月20本前後のコラムを提供するほか、『新・週刊フジテレビ批評』『TBSレビュー』などの批評番組に出演。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動している。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。