通常国会会期末の会見で、消費増税の再延期を表明した安倍晋三・首相はこういって胸を張った。
「世界経済のリスクが高まるなかで、内需を腰折れさせかねない消費税の増税は延期する。そう判断いたしました」
消費税率10%への引き上げを2019年10月まで延期することを表明したその表情は、危機感というより、自信に満ちあふれていた。
国民も大歓迎した。新聞各紙の世論調査では、増税延期への賛成が共同通信の71%をはじめ、毎日66%、読売65%、朝日59%に達し、株価は上昇、内閣支持率も一気にアップした。誰だって増税はないほうがいい。だが、ちょっと待ってほしい。
消費税を巡る論議では、選択肢は「予定通り10%に上げる」か「増税を延期して8%に据え置く」かの2つしかなかった。重要な選択肢が一つ抜けている。
「この際、税率5%に戻すのが正論です」
そうはっきり指摘するのは長谷川幸洋・東京新聞論説副主幹だ。
「日本経済はせっかくアベノミクスで上向いていたのに、2014年4月に消費税を8%に引き上げて失速してしまった。いま税率を8%から5%に戻せば、個人も企業も財布の紐を緩め、商店街だって大喜び。瞬く間に日本経済は復活します」
数字はそれを裏付ける。アベノミクスがスタートした2013年度は株価が急騰して高額商品を中心に消費が急拡大し、日本の経済成長率(実質)は2%に達した。ところが、翌2014年度に消費税率を8%に引き上げた途端、国民は財布の紐を固く締めて消費は低迷、成長率はマイナスに転落した。2015年度の成長率(速報値)は0.8%と辛うじてプラスに転じたが、個人消費も実質賃金もマイナスのままだ。
消費税8%への増税が景気回復をぶち壊したのは明らかだろう。ならば、長谷川氏が指摘するように5%に戻せばいい。
※週刊ポスト2016年6月17日号