綱紀粛正の結果は(写真:アフロ)
何事にも表があれば裏がある。綱紀粛正を進める中国において、この問題については議論百出である。現地の情勢に詳しい拓殖大学海外事情研究所教授の富坂聰氏が指摘する。
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2014年2月、世界一の“性都”とまで評された中国広東省の都市・東莞市が一斉摘発をうけた。これによって大量の性産業従事者が吐き出されて、北京や上海といった各地の大都市へと流れ込んだとされている。この時に起きた人の移動は、スマホの追跡からビックデータによって示され、大きな光の流れになったとされるほどだった。
当時の東莞は、「もう二度と逆戻りすることのない街」と呼ばれ、性産業の新天地と位置づけられていた。そのため性産業にかかわる女性たちが、もうこの場所から追われることはないと住宅を購入して腰を据えていたとされる。
だが、そうした思い込みは東莞に対する大規模一斉捜査によって打ち砕かれたのであった。この政府の決断に対しては当初、中国の知識層を中心に摘発を疑問視する声が相次いだが、その根拠の多くが、「では、政府は彼女たちに仕事を与えられるのか?」というものだった。
その後も東莞の“復活”についてはメディアが散発的に記事にするほど中国国内では関心が高く、さまざまな立場の人から意見が発せられてきたのだが、今回、上海の名門大学として知られる同済大学の教授(朱大可・文化批評研究センター)が一石を投じて話題となっている。
論点は「性の合法化」である。大手検索サイト「捜狐」のインタビューを受けた朱教授が答える形で持論を述べている。
まず、記者が西側社会で性産業が合法であり、それがある程度うまくコントロールさせている現実があると指摘し、それに対して朱教授が答えた。
「そうです。性産業が合法化されている西側社会では、性の管理という視点では比較的うまくコントロールされているといえるのではないでしょうか。(中略)人間の性への渇望に対する一部の解決にもなるでしょうし、しかも健康な管理が可能になる(非合法で地下に潜ると性病などの拡大を管理できないという意味)。そのうえ国家にとっては新たな税収減にもなるということです。
洪水のような性の欲望に対して『禹王の治水』のように臨むのか。それとも旧来型の単にせき止めるだけの方法で対処すべきなのか。こんな簡単な問いは小学生でも理解できる。(中略)暴力的な方法でこれに対ししても社会に矛盾を生み、暴力性犯罪の増加を招くことになります。取り締まりにコストをかけても警察に対する恨みや憎しみを生むだけです」
将来の大きな目標か、それとも目の前の問題への現実的な対応か……。