ダルビッシュ有(29)と松坂大輔(35)は、日本でも大リーグ入りしてからも大活躍したが、故障して靭帯移植手術(通称トミー・ジョン手術)を受けてからの歩みには大きな差がある。『プロ野球なんでもランキング』(イースト・プレス)など野球関連の著書の多いライターの広尾晃氏が注目するのは「手術の時期」だ。
「データからわかるのは、“トミー・ジョン手術は若いほど成功する”ということ。肘が若く、良好な状態で靭帯を移植すれば、従来あった靭帯より太く強くできる。日本人でも田澤純一など20代で手術した選手は成功している。ピークを過ぎたり、靭帯損傷が悪化してからの手術だと、復帰後の成績は上がっていない」(広尾氏)
ダルは靭帯が裂けていない状態でオペに踏み切った。その理由について、ダルはこう語っている。
「日本は完全に靭帯が切れないと手術しない。日本の病院は僕の肘を見て、“手術の必要はない”と言った」
だが、ダルはいつ靭帯が切れるかという恐怖で「腕が振れない」ことを恐れて20代での手術を決意した。
対する松坂は30代になってからの手術で、その上、執刀医から「靭帯は完全に切れていて、開けたところに靭帯がなかった」と言われるほど症状は重かった。
「ダルは球団からのリハビリメニューだけでなく、プロ並みという栄養サプリメントの知識を一段と極め、徹底した栄養管理とウェイト主体の独自トレーニングで肉体改造に取り組んだ」(テキサスの地元紙記者)
リハビリ中、ダルビッシュの体重は6キロ増えて107キロになった。全身をパワーアップさせることで肘への負担を極力少なく投球できるようになったという。日本体育協会公認スポーツドクターで古川整形外科医院(京都府)の古川泰三院長は言う。
「リハビリで筋肉、柔軟性といった術後のコンディションを改善することは投球の向上に必須です。ダルは筋肉とともに体幹の柔軟性を鍛えたことが復活につながったのではないか」
※週刊ポスト2016年6月17日号