「機体が緊急停止した後、『ただ今、再度離陸の許可を待っています』とアナウンスが流れ、客室乗務員は笑顔だったので安心したのですが……。消火活動で窓が白くなったのを機内から見て、恐怖を感じました」
5月27日、時速100キロ以上で羽田空港を離陸滑走中の大韓航空機を襲った「発火事故」。一歩間違えれば大惨事だったこの機体に乗り合わせた40代女性は恐怖の体験をこう証言した。
出火したエンジンは米国製だが、大韓航空機側の整備や定期点検が不十分だった可能性が指摘されている。事故原因の究明を巡り、日米韓の運輸安全委員会が合同調査中だ。
実はその前日、韓国内でも、市民に衝撃を与える報道があった。韓国のYTNテレビがヒュンダイ(現代)自動車のSUV「サンタフェ」の車載カメラが記録した事故映像を放送した。その映像では、赤信号の手前で減速したはずの車が突然、轟音を立てて加速し、前方の車に追突。運転手や同乗者が悲鳴をあげるなか、車はいったんバックした後、再び急加速して前方の車に突っ込むことを2度繰り返した。
韓国メディアによると、この車は今年1月に購入したばかりの新車。運転手は、「ブレーキを踏んだのに急加速した」と話したという。
映像を見た韓国のネットユーザーから「欠陥車じゃないか」「ヒュンダイは大丈夫か」との声が殺到。事態を重く見た警察は、国立科学捜査研究院に事故原因の調査を依頼した。自動車業界に詳しい経済ジャーナリストの福田俊之氏がいう。
「ヒュンダイをはじめ韓国企業は日本や海外の技術を真似して、安い人件費で製品を大量生産する“二番手商法”を進めてきたが、その安全性に疑問の声が上がっています」
ヒュンダイへの不安が顕在化したのは3年前だ。2013年4月に発売されたサンタフェはヒット商品となったが、同年夏ごろから「トランクや後部座席が雨漏りする」との苦情が相次いだ。
あり得ない失態にヒュンダイは公式に謝罪し、リコールに応じた。だが、納得しないユーザーは新車との交換を求めてソウル中央地裁に提訴する騒動となった。
今年に入ってからもヒュンダイは、最高級車の「エクウス」「ジェネシス」でワイパーが正常に作動せず、安全運行に支障を与えかねないとしてリコールした。
日本でも自動車メーカーの燃費偽装などが発覚しているが、本場・米国での安全性評価では日韓の差は歴然。米高速道路安全保険協会が昨年末に発表した自動車の安全性評価で、最高評価基準を満たした全48車種のうち、日本車が30車種に対して韓国車はわずか2車種のみだった。
※週刊ポスト2016年6月17日号