まるで来年12月にある韓国大統領選挙の遊説行脚の予行演習のようだった。伊勢志摩サミットでの訪日に合わせて韓国に“凱旋帰国”した潘基文(パンギムン)・国連事務総長は国際シンポジウム出席といった名目で、首都・ソウル、韓国南端の済州島などを巡る約1週間の強行日程をこなし、国連本部のあるニューヨークに戻った。
「潘氏は次期大統領候補の世論調査で2位に10ポイント以上の差をつけてトップ。行く先々で出馬について質問され、『期待されているのはわかっている』といった受け答えで野心を隠しませんでした」(現地メディア関係者)
問題はその潘氏が国連事務総長という立場にありながら、朴槿恵・大統領以上に反日姿勢を鮮明にしてきたことだ。
「2007年10月には国連本部で開かれた事務総長主催のコンサートで、『東海は韓国の海、独島は韓国の領土』と書かれたビラが撒かれて問題となりました(東海=韓国が主張する日本海の呼称、独島=島根県・竹島の韓国名)」(同前)
2013年8月には記者会見で、「日本の指導者は正しい歴史認識を持つべき」と発言。折しも20年五輪開催地を決めるIOC総会の直前で、国連事務総長による東京五輪招致の妨害だと話題になった。
“潘大統領”が誕生すれば、慰安婦問題も蒸し返されかねない。昨年12月に日韓両政府は、「元慰安婦を支援する財団に日本政府が10億円を拠出」「ソウルの日本大使館前にある慰安婦像の撤去」などで“最終的かつ不可逆的な解決”とすることに合意した。
潘氏も当初はこれを「歓迎する」としていたが、今年3月に国連本部で韓国人元慰安婦と面会すると、「(歓迎すると言ったのは)誤解があった」「両国の解決への努力を歓迎したのであり、合意内容を歓迎したのではない」と手のひら返し。
大統領が代わるたびに「反日」で政権浮揚が図られてきた悲しい歴史を、またも繰り返すつもりなのか。
※週刊ポスト2016年6月17日号