「こども食堂」をご存じだろうか? 経済的に厳しかったり、1人親で食事の支度がままならなかったりと、さまざまな事情を抱えた子供らに無料、あるいは低価格で食事を提供する場所のこと。育ち盛りの子供に充分な栄養をとってもらうとともに、大人数で食卓を囲む楽しさを知ってもらう狙いもある。また、必ずしも貧困というわけではなく、学習支援の一環としても機能を果たしている。そんな「こども食堂」が熊本に、全国で初めて病院内にオープンした──。
諸事情のために育てることのできない新生児を、親が匿名で預けられる「赤ちゃんポスト」。日本では唯一、『慈恵病院』(熊本県熊本市)が、「こうのとりのゆりかご」という名前のもと、このシステムを採用している。
4月16日に発生した熊本地震(本震)の被害は、慈恵病院にも及んだ。停電は一時的だったが、水道とガスがストップ。4月18日には食料の備蓄がなくなり、一時、入院していた患者84名に食事を提供することが困難となった。それだけではない。建物の倒壊が怖いからと、近隣の高齢者らが同病院に避難してきた。その数、100人近くにものぼった。
大きな余震が続く混乱のなか、それでも、「この取り組みだけは、決して先延ばしできない」──そんな思いのもと、同病院スタッフは一丸となって、「こども食堂」オープンの日を迎えた。
「おにぎりばっかりだったから、お肉久しぶり」「フランクフルトおいしい!」
青空の下、明るい子供たちの声が病院の駐車場に響いたのは、震災からわずか10日後の4月28日。鹿児島県から届いた100㎏の豚肩ロース肉、滋賀県からは近江牛が届き、BBQが行われた。集まった子供たちは350人以上。
「こんな時だからこそ、立ち上がらないといけないと思ったんです」
そう話すのは、慈恵病院の蓮田健副院長だ。そもそも「こども食堂」を始めようという声が上がり始めたのは、2012~2013年頃のこと。首都圏を中心に「こども食堂」がオープンし、現在は全国的に「こども食堂」への取り組みが進んでいて、それをとりまとめるネットワークもある。(http://kodomoshokudou-network.com/)
そんななか同病院で「こども食堂」開設の動きが一気に進んだのは、昨年末、九州で初めての「こども食堂」が福岡でスタートしたのがきっかけだった。
4月28日のオープン以降も、毎週木曜日の夕方、椅子36脚、8畳の和室がある病院内の職員用食堂に「こども食堂」がオープンしている。第2回はちょうどこどもの日。カレーライスやウインナ、フルーツなど、栄養バランスを考えながらも、子供が好きなメニューがふるまわれた。
※女性セブン2016年6月23日号