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注文増加中 高齢者に精神的なゆとりをもたらす「減築」

 年を重ねるごとに家に居る時間が長くなるのが高齢者だが、楽しくくつろげるはずの家で、ストレスを感じてはいないだろうか。

 総務省の統計によると、高齢者夫婦のみの世帯が占める割合は1983年には4%だったが、2015年には、11%と約3倍に。しかも、その約8割は戸建て住宅住まいだ。

 約20年後には現在55才以上の人の約4割がひとり暮らしになると推計され(※1)、近い将来、高齢者のひとり暮らしは珍しくなくなる。果たして、このまま住み慣れた家に住んでいていいのだろうか。

(※1)国立社会保障・人口問題研究所調べによると、日本の世帯総数は2035年には4956万世帯と予測。世帯主では、同年に75才以上が1174万世帯となり、そのうちひとり暮らしは、466万世帯になる。

「1980~1990年代は、郊外の新築戸建て住宅が人気で、家族が増えるなどの変化に合わせて家を増築するのが主流でした。しかし、10年ほど前から“減築”の要望が増え始め、今では年間受注数8000~9000件のうち、約5%が“減築”を希望されます」

 と、住友不動産の広報担当者は話す。現在、暮らしに関する不満や不安の原因が“家そのもの”にあるなら、減築リフォームを考えたほうがいい。不用品を整理する断捨離や、老いの身支度などが注目される中、老後を快適に暮らすためにも、かなり有効な選択だ。その際、考えてほしいのは、今よりこの先の暮らしだ。

 子供が独立し、夫婦ふたりだけになると、あまりにも広い家は効率的ではなく、防犯面での不安も生まれる。そこで、夫婦の生活スタイルにマッチした住空間にするためのリフォームで、余剰な床面積を減らす“減築”を選択する人が増えている。

「家族みんなで暮らすには狭苦しかった家が、ひとり暮らしとなると広すぎます。それに、広い家は掃除も大変だし、冷暖房費も余計にかかる。ちょっとした段差につまずき、2階に上がるのもおっくうに。これでは、“広くてのびのび暮らす”というより、“広苦しい”空間になってしまいます。だから、“小さな暮らし”を考え、“狭楽しい”家を目指すべきなのです」

 そう話すのは、『「おひとりさま」の家づくり』(新潮新書)などの著者である、建築家の天野彰さん。

「例えば、敷地いっぱいに家を建て、部屋数重視で細かく仕切られている場合、暮らしていくうちに、陽当たりや風通しの悪い北側の部屋は、人が寄りつかなくなるもの。使わないで暮らせるのなら、本来は必要のない部屋。減築すれば、より快適に暮らせます」(天野さん)

 このような家の場合、お手本にしたいのは、狭い間口で中庭のある京都の町屋だ。

「6部屋あった家の1部屋を減築して庭にすることで、すべての部屋の風通しがよくなり、日の光も入って、生活空間も広げることができるんです。“減築”というと、狭くてコンパクトになる半面、余裕がなくなるのでは、と思うかもしれませんが、むしろ精神的なゆとりを生み、快適になりますよ」(天野さん)

※女性セブン2016年6月23日号

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