5月の上旬には1トロイオンス(31.1グラム)=1300ドル近くまで上昇した金相場だが、今後どう動いていくのか、金の動向に詳しい豊島逸夫氏が解説する。
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現在の金価格はドル相場次第で「ドル安なら上がり、ドル高なら下がる」という逆相関関係が明確になっている。
そもそも金は基軸通貨であるドルに対する不信任投票といえる。だから米国の利上げが当初想定された年4回ペースではなくなるなど利上げ観測の後退を背景にドル安基調が続くなか、ドル建て金価格は年初の1100ドル割れから1300ドル台直前まで急騰してきた。
ここまで米FRB(連邦準備制度理事会)が利上げに踏み切れない要因が次々と浮上している。
まず、国内要因としては、米国経済の綻びともいえる状況がある。今年1~3月期のGDP(国内総生産)成長率が1%を下回る低水準となり、雇用統計も質を伴った改善とはなっていないなど、ここにきて成長の鈍化が懸念され、とても利上げできる環境にない。
外的要因としては、依然先行き不透明な中国経済に加え、イギリスのEU(欧州連合)離脱問題ものしかかっている。6月に予定される国民投票で離脱となれば、英ポンドの暴落は必至であり、これも利上げを延期させる要因となっている。
さらにここにきて浮上しているのが、誰もがあり得ないと思っていても絶対ないとは言い切れなくなった「トランプ大統領リスク」である。トランプ氏はドル高を問題視し、「イエレンFRB議長を更迭する」などと発言しており、これも米経済を少なからず揺さぶっている。
そのような米中欧の不安要因によって、特に米国では株に対する不信感が高まるなか、ニューヨーク先物市場で金が囃される構図となっている。
実際、5月の連休中にはそれを象徴するような出来事も見られた。ニューヨークで開催されたヘッジファンド会議で、「ソロスの右腕」と称される伝説のファンドマネージャーであるドラッケンミラー氏が「株から撤退せよ。金を持て」と発言したのだ。
同氏の運用するファンドは過去30年間、一度もマイナスがなく、年間平均リターン30%もの実績を残している。そんな同氏が昨年4~6月期に金ETFを約3億ドル(8トン相当)購入しており、まだまだ注目するというのだから、ヘッジファンドをはじめ短期マネーがこぞって金を買い上げるのも当然だろう。
※マネーポスト2016年夏号