女優の“人権侵害”をめぐってAV(アダルトビデオ)業界が揺れている。高額違約金を楯にAV出演を強要されたり、自殺に追い込まれたりする悲惨な事例を紹介した国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ(以下HRN)の「被害報告書」が3月に発表され、波紋を広げているのだ。
発表直後から現役女優らの異議が相次いだ。河西あみはツイッターで〈AV業界にいるけど、無理やり出されてる人一人も見た事ないのですが…親にばらす!とかも無い〉、初美沙希も〈少なくとも私が見ている今のAV業界は「とてもクリーンです」〉とつぶやいた。
さらに、元女優で作家の川奈まり子氏も“参戦”。ネットメディアで、
〈問題があるAVは存在し、出演強要被害を否定するものではありませんが、倫理審査を通過した合法的なAVが大半であり良心的な業者が多いのも事実です〉
〈問題を起こしていないAVまでも一括りにして、「AV出演は公衆道徳上有害な業務」と喧伝する目的は何でしょうか〉
と、AV業界への差別的な偏見に釘を刺した。
一方、5月26日に行なわれたHRN側のシンポジウムに元テレビ愛知の契約アナ・松本圭世氏が登壇し、自身の経験を話した。
松本アナは学生時代に街頭で声をかけられ、飴を舐める撮影に応じたために素人ナンパAVに無断で映像が使われた。ネット上で女子アナだと特定されて大騒動になった挙句、退職を余儀なくされた。松本アナが語る。
「私が自身の経験をお話しすることで、AV出演強要が社会問題として論議される端緒となり、被害者の声に世間が耳を傾けてくれることを望んでいます。大手のプロダクションから受けた被害を訴える声があがっていると聞いています。『業界はクリーンだ』と声をあげた女優さんと同じプロダクションについても被害の相談が寄せられていると聞いています」
こうした指摘には川奈氏も一定の理解を示す。
「HRNの主張がすべて間違っているというつもりはありません。AV業界とHRNが共闘して悪質業者を減らすべきです」
AV業界の「浄化作戦」は功を奏するか。
※週刊ポスト2016年6月17日号