子供たちがいた頃は、にぎやかだけど狭苦しいと感じていたわが家。でも、子供の独立などで、夫婦だけ、あるいはひとり暮らしになった途端、広すぎて寂しく感じるようになることも──。そう感じている高齢者も多いだろう。そんななか、注目を集めているのが「減築」だ。広すぎて面倒だった掃除の手間が軽減されるだけでなく、冷暖房費の節約にも繋がる。さらにすべての部屋の風通しが良くなり、逆に生活空間の拡大にもなるという。
そして、『「おひとりさま」の家づくり』(新潮新書)などの著者で、建築家の天野彰さんは、減築で生まれた余剰スペースの活用法として、「契約同居」を提案する。これにより、リフォーム費用どころか、老後の安心までついてくるという秘策だ。
「二世帯住宅を建てて子供を呼び戻すという考えもありますが、親が子供を同居に誘うと、子供は老いた親のために“一緒に住んでやっている”と錯覚し、仲良し親子のはずが、トラブル続きということにもなりかねません。それなら、いっそのこと他人に住んでもらえば、家賃収入が得られる。それをローン返済に回すことだってできるんです」(天野さん、「」内以下同)
しかし、アパートを建てたとしても、借り手が見つからないかもしれない。
「計画を立てた時点で近所の不動産屋さんに相談し、家賃を相場の半分程度にして予約募集をかけてもらうといいですね。ただ安くするのではありません。大家である自分たちが高齢なことを伝え、自分が倒れたときは病院に連絡してもらう。普段は買い物を手伝ってもらうなどの、生活サポートを賃貸契約の条件にする。
また、こちら側の要望だけでなく、小さな子供がいればたまに預かる。庭を自由に使ってもいい。ペット可など、借り手の希望も受け入れる。そうした相互扶助をする契約同居人を探せばいいんです。公証役場で契約内容を書面化しておけば、契約違反の場合の解約もスムーズですよ」
実際に、この形で家賃収入を得られるようになったおかげで、銀行からの融資を受けられ、家賃で返済を完済したケースも多数あるという。おまけに、この“契約同居”、実子との同居につながる副産物もあるそうだ。
「減築をしてアパートの計画を始めたら、“他人に住まわせるくらいなら自分たちが”と、言い出す子供も少なくありません。二世帯住宅にする場合も、いざとなったら賃貸に出せる設計にしておけば、転勤中のみ貸し出すこともでき、ムダになりませんよ」
自己使用部分を減築した賃貸アパート併用リフォームの場合、世帯数に合わせてキッチン、浴室、トイレなどの設備なども必要となるため、総費用は2000万円くらいからが相場だ。
「貸し出す部屋と自宅が完全に分かれていれば、区分所有で相続や財産分与ができるため、いざというときのための備えにもなりますよ」
※女性セブン2016年6月23日号