宝槻泰伸さん(35才)は、子どもに学ぶ楽しさを伝える学習塾『探究学舎』運営者で、2015年5月から女性セブンに連載していた教育コミックエッセイ『ホーツキさんちのオヤジ』(マンガ・小出真朱)の原案協力者。
同作は、3人の息子を高校にも塾にも行かせず京都大学に進学させた父親の破天荒な教育論を描いたマンガで、泰伸さんは、3兄弟の長男だ。6月6日には、その連載をまとめた単行本『とんでもオヤジの「学び革命」』が発売された。
「このマンガで伝えたかったのは、“何のために勉強するか”という質問に、自分の言葉で答えられる子どもを育てることこそがいちばん大切だということです」(泰伸さん)
泰伸さんがそう言い切る背景には、日本の教育改革がある。2020年には、大学センター試験が廃止されて、「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」が実施される予定だ。このテストの解答形式は、従来の選択式から記述式に変わる。特に英語は、「読む」「聞く」「書く」「話す」の4技能を問うようになる。
「今までの大学入学試験は、公平性の価値観に基づくものでした。どういうことかというと、18才までの人生経験はいったん全部無視して、現時点の諸能力を一律の試験で評価しますということです。これは、答案の正誤が非常に客観的に出ます。マークシートはその典型的な例ですよね。それに伴って、点数も客観的につけられる。よって、621点は合格、620点は不合格って、できると。すごく公平でしょう。でも、2020年の教育改革では、新たに以下の能力が評価すべき対象として追加されました」(泰伸さん)
【思考力・判断力・表現力】
【主体性・多様性・協働性】
「知識と技能をどう活用するか、どう向き合うかということなんですが、難しい単語の羅列で何のことかわかりませんよね(笑い)。これは、人生の目標を持ち、それに向けての道筋をきちんと立てられる子どもを求めます、ってことなんです。たとえば、「ホーツキ家」の三男・昌則(30才)の夢は映画監督です。観客の心を深く打つ作品を作りたいそうです。
そんな映画監督になるためにはどうしたらいいのか。昌則は、まず教養や哲学を身につける必要があると考えた。映画作りのスキルや技能はその後、学ぼうと。だから、京都大学に入学して、人間としての基礎教養を身につけたい。卒業後はアメリカの映画学校に留学して、そこで映画表現の技能、スキルを勉強したい。そんなことを10代半ばから考えていました。
これからの大学入試では、すべての受験生が「将来どうなりたいか」「何のために大学に行って何を学びたいのか」が問われます。昌則のような考えを持つ必要があるんです」(泰伸さん)
※女性セブン2016年6月23日号