2011年の東日本大震災や今年4月に発生した熊本地震では、国内のみならず海外からも多くの寄付が集まっている。被災地のために個人で募金活動を始める場合、何らかの届け出は必要なのだろうか? 弁護士の竹下正己氏が回答する。
【相談】
熊本地震で被災された方々の力になりたいと、ひとりの高校生が募金活動を始めたというニュースに感動しました。私も募金活動を行ない、被災地の手助けになればと思っているのですが、個人で行なう場合、どのような点に注意すべきでしょうか。また、警察や行政に許可を取らなければいけませんか。
【回答】
批判される募金活動もあり、注意が必要です。例えば最初からだます目的で、大勢のアルバイトを雇い、弱者支援を謳って街頭募金した暴力団員が詐欺罪などで処罰されたことがありますし、霊感商法で有名な宗教団体が、街頭募金の一部だけを寄付して残りをとってしまうことも知られています。
さらには、その活動の意義が社会的に認知され、法人化されるようになると監督官庁が天下り先にして高額の報酬を払わせて批判されたようなこともかつてはありました。こうした問題ある活動と同視されないようにすることが大切です。
そのためには、活動の責任者の住所氏名、募金の目的とその寄付先を明確にして募金活動し、その募金を個人のお金と混同しないよう特別の預金口座に預けるなどの分別管理が必要です。
募金を適時に寄付し、こうした募金の状況と寄付の実行を記録に残し、これらの実績を速やかに公開して信用を高めていくことも重要です。また、社会的信用の厚い地元の名士に賛同してもらい、監査を受けることも有効でしょう。ボランティア活動ですから、経費も含めて募金には手をつけない覚悟も必要です。
なお、募金活動に許可はいりませんが、例えば街頭で募金する際には、道路交通法77条1項4号に基づく公安委員会の定めに従って警察の許可が必要な場合もあります。東京都の場合、「交通の頻繁な道路において、寄付を募集し、若しくは署名を求め、又は物を販売若しくは交付すること」は許可対象になっていますから、人通りの激しい道路での街頭募金は警察の許可が必要となります。
この定めは各府県で違っているので条例を確認してください。駅構内などの施設内で募金活動する場合も、管理者の許可をもらわないと退去を求められると思います。
【弁護士プロフィール】
◆竹下正己(たけした・まさみ):1946年、大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年、弁護士登録。
※週刊ポスト2016年6月17日号