今年4月、中国浙江省寧波の北朝鮮レストラン従業員ら13人が東南アジア経由で韓国へ亡命したことについて、北朝鮮は韓国による「拉致行為」と非難し、亡命した従業員らの引き渡しを求めているが、韓国側が応じていない。そのため、北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長はこの「報復措置」として北朝鮮の特務機関である国家安全保衛部要員300人を中国内に急派し、韓国人を拉致するよう命令したことが分かった。
このため、中国の公安警察当局は北京の韓国大使館経由で在中国の韓国人に対して、北朝鮮が経営している料理店や北朝鮮系ホテルなどに近づかないよう注意を促している。北朝鮮問題専門ニュースサイト「デイリーNK」中国語版が報じた。
朝鮮中央通信によると、北朝鮮の従業員らの引き渡しを求めているのは「強制拉致被害者救出非常対策委員会」で、韓国の朴槿恵大統領を名指しし、抗議文を出している。さらに、北朝鮮メディアは従業員らの両親や親戚らを取材し、「子供らは亡命するような人間ではなく、韓国政府に拉致されたのだ。すぐに返してほしい」などと涙ながらに懇願する模様を報じている。
この4月の事件のあと、5月初旬にも中国・西安市で北朝鮮が運営するレストランから新たに複数の従業員が失踪したとのニュースが伝えられており、北朝鮮当局は脱北者が増加する事態に神経を尖らせている。
このため、業を煮やした金委員長が保衛部要員300人あまりを中国に派遣し、韓国人を拉致するよう指示したとされ、中国当局は韓国大使館経由で、注意を喚起している。
中国側は中朝国境付近の山東省丹東市や遼寧省瀋陽市、吉林省延吉市などに最低でも300人ほどの北朝鮮当局の要員が派遣され、空港や港湾などで韓国からの航空便や船便で中国を訪問する韓国人をチェックしているという。彼らがホテルにチェックインした後、1人で出てくるのを見届けて、後をつけて拉致する可能性が高いと警告。
北朝鮮国境に近い都市の中国公安当局は見回りの人員を増やして、こうした事案に対応する態勢を整えている。