急増する訪日外国人のうち、もっとも割合が大きいのは中国人観光客だ。ところが、急増する彼らの要求にサービスが追いついていない。そして、彼らのニーズを受けとめてビジネスチャンスを広げているのは、中国人による中国人向けビジネスばかりになりつつある。経営コンサルタントの大前研一氏が、中国人観光客が日本で落とすはずのカネを、どうやって中国企業や中国人が回収しているかについて解説する。
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訪日中国人観光客も相変わらず増え続けている。昨年の中国株急落や不動産バブルの崩壊懸念によって訪日中国人観光客が減少すると危惧する見方もあったが、それは中国人を十把一絡げにしていることによる考え違いだ。
もちろん、中国人の中には汚職などで蓄財した輩もいれば、不動産投機や株投機に失敗して財産を失った人もいる。だが、都市部の中国人の多くは住宅をいったん高値で売り抜け、それなりに貯蓄率も高い健全なミドルクラスになっている。そして、このうち一度日本を訪れた人の大半は日本が好きになり、リピーターになっている。
だから中国国内の景気が悪くなっても(「爆買い」は下火になるかもしれないが)、中国人観光客は今後も日本にやって来ると思う。
そして、いま彼らの間で人気を集めているのが“中国版エアビーアンドビー”である。「自在客」「住百家」「途家」といった中国系民泊仲介サイトが日本でのサービスを拡大して急成長しているのだ。これらが増え続ける中国人観光客に部屋を貸し出しているわけだが、それでも宿泊施設のキャパシティが全く足りないため、「自在客」や中国で圧倒的に強い「上海春秋国際旅行社」などは日本で自前のホテルを建設することを計画しているという。
中国人観光客が日本に来て落としていくはずのカネを、中国企業や中国人がちゃっかり回収する仕組みが着々と出来上がりつつあるのだ。