「小さいころから、将来の目標を持ち、それに向かって励むなんて、一部の子どもにしかできない」――そう思う親はきっと多いだろう。
「本来勉強は楽しいものだ」と、学習塾『探究学舎』の運営者・宝槻泰伸さん(35才)は言う。
泰伸さんは、2015年5月から女性セブンに連載していた教育コミックエッセイ『ホーツキさんちのオヤジ』(マンガ・小出真朱)の原案協力者。同作は、3人の息子を高校にも塾にも行かせず京都大学に進学させた父親の破天荒な教育論を描いたマンガで、泰伸さんは、3兄弟の長男だ。泰伸さんに親の子どもへの接し方を語ってもらった。
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子どもに教育投資をしてください。学校以外の居場所をどんどん作ってあげましょう。学校は、知識と技能を学び、共通体験を得る場でしかありません。共通体験とは、具体的には体育祭や部活、修学旅行といった、同級生と一緒に楽しむイベントです。
この場所で、人生の目標を培うことは難しい。2020年に教育改革(大学センター試験が廃止されて、「大学入学希望者学力評価テスト<仮称>」が実施される予定)をしても、しばらく学校はそういう場であり続けるでしょう。
保護者のかたの中には、「うちの子は、学校以外にサッカースクールに通っている」とおっしゃるかたがいます。果たして学校とサッカースクールの往復だけで、人生の目標を見つけられるでしょうか? なかなか難しいことだと思います。
人生の目標を探すには、社会を知り、それを通して自分を知る必要があります。ですから「これをやってみる?」「こういうのもあるけどどう?」とさまざまな、体験の機会を提案してほしい。
たとえば、ピースボートという世界一周旅行する船に乗って国際理解を深める。パソコンのプログラミング合宿に参加して自分のスキルを試してみる。学校の成績に関係がなさそうな一見、無駄なことこそ重要なんです。それを意味がないと決めつけるのは、子どもの可能性を認めていないことになります。
うちのオヤジは、子どもが社会を知ること、社会に飛び込むことを何よりも優先してくれました。子どもと社会の接点を作ってあげる。これが大切です。
一方、まず学校の勉強についていくことが第一歩と考える保護者のかたもいると思います。そのためには、人生の目標とはまた別の教育が必要になります。子どもの地頭を鍛えてあげましょう。
たとえば、キャンプに出かけてみる。キャンプは、柔軟性がないと臨機応変な対応ができません。計画性がなければ命にかかわる事態に陥ることもあります。キャンプは、物事を段取りする能力が鍛えられます。その力は、学校で勉強をする際に必ず役立ちます。
トランプや麻雀もおすすめです。作戦を立てる力がつき、問題を解くための筋道を立てられるようになります。地頭を鍛えれば、学校の勉強は、すぐにできるようになります。そういった段階を踏まず、学校の勉強だけに興味を持たせようとするのは至難の業です。
とにかくいい学校に入ればいい。机に向かってコツコツ勉強するのはいちばんだ。その価値観は今すぐ捨て去って、子どもに接してください。
※女性セブン2016年6月23日号