日本人の失明原因第1位にもかかわらず、「緑内障」を自分とは縁遠い病気だと考える人が多いという。そもそも気づいていない人もいるのだが、推定患者数は約400万人、40歳以上の20人に1人が発症しているとされる。緑内障は年齢とともに発症するリスクが高くなるため、40歳以上の人は年に1回は検査を受けたほうがいいとされている。
そこで、40代前半の本誌記者も眼科を受診した。まず行なわれたのが、基本的な「視力検査」と、専用の機器で近視、遠視、乱視の度数を調べる「屈折検査」。これらは数分で終わる。続いて「眼圧検査」、「眼底検査」、そして前述の「視野検査」の3つを受ける。
眼圧検査は、眼に空気を噴射し、眼球内の水の圧力を調べる。痛みはない(直接、眼に機器をあてて測る方法もある)。眼底検査は、医師が小さな顕微鏡で眼球の中を覗いた上で、眼底写真を撮り、視神経の減り具合を調べる。視野検査は、ドームの中を覗いて、上下左右に現われる光が見えた時にボタンを押す。その結果で、視野が欠けていないかを調べる検査だ。
記者の検査結果は、「緑内障ではない」だった。待ち時間がなければ、眼科医による結果の説明を含め、時間は1時間程度(眼科によっては、予約できる医院もある)。費用は3割負担で約2200円だった。
眼圧検査と眼底検査は人間ドックでも受けられるが、それは緑内障の疑いがあるかどうかの“ふるい”に過ぎない。確定させるためには、眼科で視野検査まで行なう必要がある。
患者が口を揃えたたのが、「緑内障の専門医に検査してもらったほうがいい」ということ。専門医であれば、わずかな兆候まで見逃さないことが多く、ごく初期の段階で見つけやすいからだ。基本的に緑内障は発見が早いほど、進行を食いとどめられる期間は長くなる。
また眼科の検査では、緑内障以外の病気についても分かることがある。記者も眼科医から「眼の中にごく初期の動脈硬化が見られる。放っておくと、体内の他の部分も動脈硬化になるかもしれません」と注意を受けた。
「実は眼科の検査というのは、採血など痛みを伴うことなく、全身の病気の疑いがわかるのです」
そう話すのは、『緑内障の最新治療』(時事通信社)の著者で、彩の国東大宮メディカルセンター眼科部長の平松類氏だ。
「眼の中の細い血管は、いわば身体の中でも末端の血管。その血管の状態はいずれ、全身の太い血管で起こると考えられる状態の最初のサインになるんです。だからそこで動脈硬化が起こっていれば将来、心臓や脳でも起こる可能性があるといえる。また眼球の奥にある眼底から出血をしている場合は、糖尿病や腎臓病、肝臓病、白血病などの病気が疑われます」
※週刊ポスト2016年6月17日号