子供達に人気のアノ職業が辞書に載るかもしれない――。オトナ世代にとってはいまいちピンと来ないけど、小中学生が「なりたい!」と憧れる職業、それが【ユーチューバー/YouTuber】。動画共有サイト『YouTube』でさまざまな商品を使った感想を、おもしろおかしい動画にしてアップするなどして、広告料を得る人たちのことだ。しかし、この言葉は現在、ほとんどの国語辞典には載っていない。国語辞典『大辞泉』の板倉俊編集長が語る。
「そもそも『YouTube』という言葉自体を収録している辞書が少ないのが現状です。辞典各社とも、日本語のスタンダートであると自負しているわけですから、一企業名、一サービス名を軽々に載せるのをためらう気持ちは理解できます」
とはいえ、企業名でも辞書に載るケースは少なくない。まして、『YouTube』は現在、創業12年目で、一般的な認知度も高い。
「たとえばNHKや朝日新聞は各辞書に載っています。もはや広く一般に定着し、既存マスコミに劣らぬ影響力を持つ『YouTube』を載せない理由は見当たりません」(同前)
そうした理由から、『大辞泉』は【ユーチューブ】という言葉を2008年から収録しているという。
そして近く【ユーチューバー】も載せる方針なのだという。『大辞泉』では、先月18日から「大辞泉が選ぶ新語大賞 あなたの新語も辞書に載せよう。」キャンペーンを実施(http://www.daijisen.jp/shingo/)しており、辞書に載っていない「新語」と「既存の言葉に新しく加わった意味」が半月で750本寄せられた。そのなかに【ユーチューバー】の掲載を求める声が複数あったのだという。
「もちろんこの言葉の存在はチェック済みで、立項の検討もしていました。しかし、複数の投稿があったことから、さらに前向きに収録を考えています」(同前)
辞書に載せるとなると、【ユーチューバー】の厳密な意味のほか、英語としても通用しているのか、それとも和製英語なのかなどなど、チェックすべきことがたくさんあるのだとか。
同キャンペーンでは、寄せられた投稿から毎月「今月の新語」が発表される。今回はほかに【熊本地震】【統一名簿方式】などの時事用語のほか、若者言葉の【しくる】と、既存だが意味の追加が望まれる語として【焼け太り】などを推す投稿が選ばれた。
【しくる】「しくじる」の俗な言い方。(投稿語釈)
【焼け太り】火災にあったあと、かえって以前よりも生活や事業の規模が大きくなること。(既存語釈)+転じて、危機や災難にあったにもかかわらず、それを利用して利益を得たり、事業規模を大きくしたりすること。(投稿を元に編集部が加筆)
ただし、投稿された語釈がそのまま『大辞泉』に載るわけではない。板倉編集長によると、「そこはやはり、言葉のプロである編集部と、専門分野ごとの執筆陣に諮り、辞書らしい正確な語釈にして掲載します」という。国語辞典としての信頼性は保ちつつ、みんなが辞書に載せてほしいと願う言葉を積極的に採り入れる……そんな試みの広がりが注目される。