投資信託市場ではリート(不動産投資信託)を投資対象とするファンドの人気が高まっているという。その背景について楽天証券経済研究所ファンドアナリストの篠田尚子氏が解説する。
* * *
国内の投資信託市場には資金流入が続いている。マーケットへの流入額から流出額を差し引いた純流入額は、4月は1910億円となり、17か月連続でプラスとなった。また、2015年度1年間の合計は7兆1346億円に上っている。
昨年は、米国の利上げや、中国景気の先行き懸念に端を発した「チャイナショック」が起き、今年に入ってからは大幅な円高が進んだ。国内の株式市場は軟調な展開が続き、投資環境は悪化している。そうした点を考慮すると、資金流入の持続は、投資信託(以下、投信)が個人投資家の資産運用ツールとして定着していることを示しているといえよう。
しかし、直近で販売が好調な投信には、かなりの偏りがみられる。4月の売れ筋ランキングのベストテンには、リートを投資対象とするものが7本入っており、そのうち6本が海外リートだ。さらに、いずれも分配金を毎月支払う「毎月分配型」となっている。
特に、上位にランクインしている『フィデリティ・USリート・ファンドB(為替ヘッジなし)』『新光 US-REIT オープン』『ラサール・グローバルREITファンド(毎月分配型)』の3本は、この4月だけでなく継続的に売れ続けており、純資産残高はいずれも1兆円を突破した。
海外リートに投資する投信が好調となっている背景には、依然として、毎月分配型に対する個人投資家のニーズが高いことが挙げられる。昨年来の円高トレンドにより、ブラジルレアルなどの高金利通貨を使って高い分配金を出し続けてきた投信からは、資金が流出している。分配金の減配や基準価額の下落が続いたことが原因だ。それに対し、現在販売好調な投信は、一定の分配金を安定して出しているため、資金を集めていると考えられる。
ただし、やはり海外リートは為替の影響は大きい。さらに円高が進むようであれば、減配や基準価額の下落は避けられない。個人投資家の資産運用先として資金を集中させるのは、好ましい状態とはいえないだろう。
※マネーポスト2016年夏号