この春から『あいつ今、何してる?』(テレビ朝日系)、『7時にあいましょう』(TBS系)という再会バラエティーがゴールデンタイムに放送されている。かつては人気を誇った再会モノだが、しばらくレギュラー放送がなく、ここへ来て2番組が突然の復活。その背景に迫ってみると、テレビ局側の編成事情なども見えてきた。テレビ解説者の木村隆志さんが再会バラエティー復活の裏側を解説する。
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かつて、1970~1980年代の『それは秘密です』(日本テレビ系)、1990年代の『嗚呼!バラ色の珍生』(日本テレビ系)や『目撃!ドキュン』(テレビ朝日系)、2000年代の『徳光和夫の感動再会!“逢いたい”』(TBS系)などの再会バラエティーが人気を集めましたが、2010年代に入ってからレギュラー放送されている番組はありません。
最後のレギュラー番組『徳光和夫の感動再会!“逢いたい”』は、特番を年に1~2本放送していたものの、昨年はなかったので、「ついに再会バラエティーは完全に消滅したのか……」と思っていたら、今年の春に突然の復活。しかし、内容は過去の再会バラエティーとは大きく異なっていました。
『7時にあいましょう』(TBS系)、『あいつ今何してる?』(テレビ朝日系)は、ともに“有名人の再会”に特化し、基本的に“一般人の再会”は扱いません。その理由は、一般人の再会は大規模な捜査が必要で、個人情報保護の壁がある上に、シリアスすぎるから。
テレビ局にとって多額の経費やコンプライアンスの面でリスクが大きく、さらに、現在の視聴者は“涙や感動”よりも“笑いや楽しさ”を求める傾向が強いため、有名人の再会に特化したほうが賢明なのです。
実際、両番組のMCには、DAIGOさんと有田哲平さん、ネプチューンさんという明るいキャラクターを起用していますし、再会シーンでかつて島田紳助さんや徳光和夫さんが大号泣したようなお約束の涙はありません。「笑いと楽しさの中に時折、涙や感動がある」という現代風の演出で進められています。
もともと再会バラエティーは、「年齢性別を問わず、家族そろって見られる」「元恋人、幼なじみ、恩人など再会相手が多彩で、笑いと涙の緩急がつけやすい」というテレビ局には手堅い番組。タレント側としても、驚き、ボー然、涙など、「ふだんのキャラクターとは異なる表情を見せられるため、好感度が上がりやすい」というメリットがあります。
実際、『あいつ今何してる?』は、仲よしトリオのネプチューンがほのぼのとしたムードを作り、ナレーターに人気子役の鈴木星蘭さんを起用するなど、いかにもファミリー志向。6月8日の放送では、横綱・白鵬がモンゴル時代に恋した同級生に大テレしていましたが、それを見る親子それぞれも自分の初恋相手に思いをはせられるのが魅力です。
しかし、いったん見切りをつけたはずの再会バラエティーを復活させた理由は、何なのでしょうか? 最大の理由は、各局が頭を悩ませる19時代の番組編成にあります。
19時代はゴールデンタイムのスタートとなる重要な時間帯ですが、ここ数年はヒット番組がほとんどありません。それどころか、「人気番組が視聴率低下で打ち切り」というケースが続出しています。
事実、『7時にあいましょう』の前番組『私の何がイケないの?』は3年半、『あいつ今何してる?』の前番組『ナニコレ珍百景』は7年半に渡って放送された人気番組でした。それを打ち切らなければいけないところにテレビ局の苦悩があり、特に「19時代にリアルタイムでテレビを見る人はどんな番組を望んでいるのか?」、頭を悩ませているのです。
録画機器やネットの発達などで、どの時間帯も視聴率を稼ぐのが難しくなっていますが、なかでも19時代は最大の難関。アニメやクイズ番組は激減する一方、外国や動物がテーマの番組が増えたり、わずか半年で打ち切られる番組が続出したり、ターゲットとなる視聴者層すら定まらず混乱している様子がうかがえます。
そこで白羽の矢を立てたのが、再会バラエティー。前述した過去の再会バラエティーはすべて19時代に放送され、成功を収めました。「有名人に特化する」という現代風のアレンジを加えましたが、「再会」という日本人の琴線にふれるコンセプトにブレはなく、19時代の視聴者との相性は上々。今後はタレントだけでなく、アーティスト、アスリート、文化人など各界の人気者をゲスト出演させることができれば、看板番組になる可能性を秘めています。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月20本前後のコラムを提供するほか、『新・週刊フジテレビ批評』『TBSレビュー』などの批評番組に出演。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動している。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。