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大山のぶ代を施設に入れた夫 苦渋の決断は他人事ではない

 認知症を患っていた人気アニメ『ドラえもん』(テレビ朝日系)の声優・大山のぶ代さん(82)を、夫で俳優の砂川啓介氏(79)が「老人ホームに入居させた」と告白し、議論を呼んでいる。

 2人は「おしどり夫婦」として知られ、昨年10月には砂川氏が『娘になった妻、のぶ代へ 大山のぶ代「認知症」介護日記』(双葉社刊)という本も執筆していただけに、反応は複雑だった。

 だが、この入所には大きなきっかけがあった。今年4月、砂川氏は尿管がんを患って入院することになったのだ。「1人で家に残すわけにはいかない」という「苦渋の決断」だった。

 介護を「する側」も「される側」も65歳以上の高齢者の「老老介護」世帯は増加の一途をたどっており、要介護高齢者がいる世帯の51.2%を占める(2013年『厚労省 国民生活基礎調査』)。団塊世代が65歳を超えたいま、その割合が今後ますます増加するのは確実だ。

 介護する側の約7割が女性という現状から、「妻を介護する」ことにピンとこない夫も少なくないだろう。だが、パートナーを介護する側に回った時に苦労するのは男性の方が多いという。介護ジャーナリストの太田差惠子氏が説明する。

「介護には当然、家事が伴いますが、男性は家事の経験が少ない人が多いので、両方を担うのは大変です。また、女性と違って地域コミュニティのネットワークが弱いので、介護に関する地域の情報も得られにくい。そのため、男性は自分ですべてを抱え込み、孤立しやすいのです」

 そこで介護の専門家に託すという選択肢が出てくるが、ここでも男性は悩む人が多いと日本ケアサポートセンター理事長の高室成幸氏はいう。

「妻を老人ホームに入れることには親族や世間の目もあります。何より男性は、これまで『奥さんに支えて貰った』という意識が強いので、後ろめたさを感じて葛藤する人が多い」

 もし同じ状況になったら、あなたは妻を老人ホームに入れられるだろうか。砂川氏が迫られた苦渋の選択は、他人事ではない問題なのだ。

※週刊ポスト2016年6月24日号

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