お家騒動に揺れた大塚家具が、またもや難局を迎えている。昨年3月の株主総会では大塚久美子・社長が、創業者の父・勝久氏(元会長)との委任状争奪戦に勝利して経営権を握ることになったが、スタートした新体制が6年ぶりの赤字転落危機に瀕している。
「2016年12月期の業績予想が大幅に下方修正され、最終損益が16億円の赤字となる見通しです。久美子社長は勝久氏がこだわった会員制を廃し、品揃えでも脱高級路線に移行しようとしていますが、顧客がついてきていない。IKEAやニトリのような低価格帯でもなく、カッシーナのような高価格帯でもない今の大塚家具のポジショニングは顧客への訴求が難しい」(経営コンサルタント・山田修氏)
そうした苦境で久美子社長の神経を逆なでしているとみられるのが、父・勝久氏の“活躍”だ。
大塚家具を去った勝久氏は、新たに家具販売会社「匠大塚」を設立。4月には東京・日本橋に店舗をオープンさせた。
こちらは従来の高級路線を踏襲し、「従業員も大塚家具から勝久氏を慕って移ってきた人が少なくない」(業界誌記者)という。その上、「『匠大塚』は非上場なので正確な数字はわからないが、客入りは予想以上に良好で、高級品を求める層にターゲットを絞り込んでうまくいっている」(経済ジャーナリスト・磯山友幸氏)という状況だ。
久美子社長にしてみれば客も社員もどんどん父に奪われている心境か。しかも、昨年の委任状争奪戦で久美子社長は、株主の支持を集めるため配当金を大幅に増やす決断をしている。その結果、大株主だった勝久氏は経営権を巡る争いには敗れたものの、前期の配当だけで1億5000万円近くを受け取っている。
「つまり新事業立ち上げの元手は久美子氏がくれてやったようなもの」(前出の業界誌記者)という状況なのだ。
「匠大塚と大塚家具は高級路線と中級路線で客層は重なっていないので正面から対立しているとはいえませんが、大塚家具がビジネスモデル転換の途上で苦労しているのは確かで、久美子社長にとっては正念場です」(前出・磯山氏)
追い出された父親に「大逆転」の芽が出てきたか。
※週刊ポスト2016年6月24日号