コラム

為替の値動き いかに実需取引が相場に影響しているか

いかに実需取引が相場に影響しているか

 日々ニュースで報じられ、多くの注目が集まる為替相場。30年の経験を持つ為替のスペシャリストで、バーニャマーケットフォーカスト代表の水上紀行氏が、最近のドル/円の動向を知るためのポイントについて解説する。

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 最近のドル/円動向を知るためには、いかにドル/円の実需取引が相場に影響しているかを知る必要があります。

 ドル/円の転機は、2011年3月11日。この日、東日本大震災が発生しました。これにより、福島第1原子力発電所で大事故が発生し、国内すべての原発が稼働停止へ。その代替エネルギーとして、大量輸入されたのが液化天然ガスです。

 輸入は海外から原材料や製品を買い入れること。輸入代金を支払うため、主にドルを購入する必要があります。震災後、液化天然ガスを大量に輸入したため、輸入が輸出を上回り、2011年に貿易収支(輸出-輸入)は赤字へと転落しました。1965年から45年続いた貿易黒字の時代は終焉を迎え、日本は貿易赤字の時代に変貌を遂げたのです。

 貿易赤字が為替相場に影響を与えたのは2012年の2月からで、相場の動き方としてはグイグイ勢いよく上がり、調整局面でも恒常的にドル買いが出るため、それ程下がらずに、また上昇を勢いづけるドル買いが出ました。

 その間アベノミクスも始まったことによる米系ファンドのドル買いも手伝って、ドル高の勢いに弾みがつき、なんと2012年2月から2015年6月まででドル/円は50円弱も急騰しました。

 しかし2014年7月からの原油価格の下落により、輸入額が激減すると状況が一変。ピーク時の2014年では12.8兆円だった貿易赤字が2015年には2.8兆円に。なんと1年で10兆円も貿易赤字が圧縮されました。

 原油価格の下落がドル/円相場にはっきりと反映されてきたのが今年2016年の1月からで、相場の動き方も大幅な貿易赤字の時の「グイグイ上がって、調整はほどほど」とは違い、恒常的に輸出のドル売りが出ているため、「ジリジリ上がってストンと落ちる」という貿易黒字下での相場の動きに近くなってきています。

 このまま行けば、貿易収支は黒字化するものと思われ、ドル/円の「ジリジリストン」の傾向は強まるものと思われます。

※マネーポスト2016年夏号

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