中国上海市の最高幹部、韓正党委書記と楊雄市長の2人が近く辞任するとの観測が出ている。また、これと同時に、このところ地方の最高幹部の人事が頻繁に行われており、いずれも来年秋の中国共産党の第19回党大会に向けた習近平主席による権力基盤固めの一環とみられる。香港誌「動向」などが報じた。
韓氏は年内にも辞任、中国国務院の幹部に横滑りし、来年秋の党大会を機に政界から引退するとされる。楊氏は現在62歳で、11月に63歳の定年を迎えるのに伴い辞任する意向だという。楊氏は2013年2月に上海市長に選出されているが、その時点では党中央委員でも同候補委員でもなく極めて異例の人事とされ、江沢民・元国家主席が市長にねじ込んだとの報道もあった。
韓氏と楊氏の両氏はいずれも上海閥に属し、江沢民氏の側近で、この2人が辞任するのは太子党・習氏の強い意向が働いているのは確実だ。後任はまだ決まっていないとみられるが、上海市トップの党委書記には習氏の最側近である栗戦書・党中央弁公庁主任が就任するとの情報も流れている。
これによって、習氏は江沢民氏や上海閥の牙城である上海を自らの勢力下に入れることで、政治的な基盤を強化したいとみられている。
上海での動きと連動するように、中国ではこのところ、地方の省トップ人事が頻繁に行われている。習氏の本籍地がある陝西省のトップである省長に習氏と同じ清華大学出身の胡和平・同省副省長が4月に昇格したほか、上海市や重慶市、湖南省、福建省の2省2市で、副市長と副省長が誕生した。
習氏は浙江省トップ時代、在職時に大学院教育を受けるという中国の独特の幹部養成教育システムを利用して、清華大学大学院に在学。その際、胡氏は同大大学院で研究員を務めていた関係で、習氏の博士課程論文の作成に深くかかわったとの情報もある。また、当時の同大の党委書記は習氏と同期だった陳希氏で、陳氏が胡氏に指示して、習氏の論文作成を手伝わせたとも伝えられる。
陳氏は現在、党中央組織部副部長で、党人事を一手に担っており、胡氏のほか、他の省市の幹部人事にも習氏の強い意向が反映されているとみられる。
これについて、『習近平の正体』の著書もあり、中国情勢に詳しいジャーナリストの相馬勝氏はこう指摘する。
「来年秋の党大会をほぼ1年半後に控え、地方の最高幹部を自らの息のかかった人物を据えることで、徐々に外堀を埋めたい考えだ。習氏は今後も反腐敗運動を一層強力に推進する意向を明らかにしており、腐敗幹部の摘発も政治的に利用するとの意図もある。今後、党の最高人事をめぐって各派の駆け引きが強まるのは確実だ」