今年前半の相場はテーマ性を持った中小型株が物色される展開が続いたが、「ひふみ投信」の運用責任者・藤野英人氏(レオス・キャピタルワークス代表、CIO)によると、今後は景気回復を先取りした「大型株の反転シナリオ」も想定されるという。そうした中で物色対象となる銘柄にはどんなものがあるのか。藤野氏が解説する。
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今後の相場で要注目なのは大型優良株ばかりではない。市場の注目度がさほど高くない、いわば“手垢”のついていないテーマはまだある。
たとえば私が興味深く見ているのが、日本の製造業復活に伴って確固たる業績向上が見込める、ITや機械分野で技術を持つ中堅・中小企業である。
一例を挙げておくと、東芝は経営再建に向けて、有望と目されてきた医療機器子会社を売却し、半導体事業に活路を見出そうとしている。そのための設備投資は年間2000億円規模とされ、関連する中堅・中小企業に資金が投下されるのは必至の情勢だ。
同じく経営再建中のシャープも台湾の鴻海精密工業とテレビの共同開発を進める予定で、それを含めた新規事業に投じる設備投資額は数千億円規模に上る見通しだ。それが関連する中堅・中小企業の業績に大きなインパクトをもたらすに違いない。
東芝やシャープはいずれも経営危機によって“選択と集中”に目覚めさせられたことになるが、そうではなく、自発的に目覚めて成長分野へ資金を集中投下する日本の製造業は今後いくつも出てくるだろう。しかも、そのような設備投資は景気や為替動向といった外的要因に左右されず、それを受注する中堅・中小にとっては確実にキャッシュが入ることで間違いなく収益につながる。つまり、大企業が集中投資する先に「お宝」は潜んでおり、設備投資を通じて日本のモノづくりの巻き返しを支える中堅・中小企業にこそ注目すべきなのだ。
このように「日本の製造業の覚醒」は今後大きなテーマになる、と私は見ている。
もちろん、まだ市場の注目度がさほど高くないため、銘柄選別には一手間も二手間も必要となる。たとえばインターネットや会社四季報CD-ROMなどで「東芝向け」「シャープ向け」といったキーワード検索を重ねたり、日々のニュースに目を凝らしたりすることも求められるだろう。
そして、そのような努力を惜しまなければ、大型優良株の値動きを上回るような、半年で株価3~5倍の上昇も期待できる「お宝銘柄」を見つけ出すことも決して不可能ではないはずだ。
※マネーポスト2016年夏号