プロ野球は勝つことが最終目標。しかし少し事情が異なる組織がある。それが二軍だ。一軍選手の調整、故障者のリハビリに、若手の育成。これを成績と両立させる。その難題に今、往年の名選手が挑んでいる。
中日は、“ガッツ”の愛称で親しまれた小笠原道大氏が今季から指揮を執る。二軍に求められるものは勝利か育成かという問いに、こう答えた。
「勝負事ですから、まず勝ちに行くことが大前提です。個人のレベルアップも必要ですが、試合に勝つことを目指すのも育成だと考えます。
だから漠然とではなく、すべて試合を考えて練習をさせている。勝負に勝てる強さを持つ若手を育てたいし、僕自身も自分がまだ知らない野球の一部分が発見できたらいいな、と」(小笠原監督)
昨年10月、バットを置いた直後に、宮崎のフェニックスリーグで指揮官デビューした。最初は監督要請に「どうしようと悩んだ」という。
「指導者経験もないし、投手を含めた全体を見ないといけないですから。一方で要請に応えたい気持ちもあった。経験豊富なコーチがいるし、そこから吸収して指導者としての自分を高めようと決意しました」(同前)
練習では小笠原監督が選手に直接指導するシーンもあったが、
「指導はコーチに任せているので、原則、見ているだけです。選手が戸惑わないため、助言したら情報をコーチと共有しています。
目指す監督像ですか? こうなりたいと決めると偏ってしまう。まっさらの状態でスタートし、成功や失敗をくりかえしながら色んなものを吸収したい。結果、誰かに似てしまうかもしれないが、最初から誰かを目指すつもりはありません」(同)
【おがさわら・みちひろ】1973年、千葉県出身。1997年に日本ハムに入団。豪快なフルスイングを代名詞に、巨人、中日でも活躍。2000本安打を達成し、2004年アテネ五輪、2006年・2009年WBC日本代表に選出された。2015年に引退。生涯成績は.310、378本塁打
●取材・文/鵜飼克郎 撮影/藤岡雅樹
※週刊ポスト2016年6月24日号