「10球も打ったら疲れたよ(笑い)」──右に曲がっていくスライスボールを目で追いながら苦笑いするのは、今年3月に日本ゴルフツアー機構(JGTO)の第4代会長に就任した青木功(73)。日本のメジャー大会のひとつ、JGTOが主催する「日本ゴルフツアー選手権 森ビル杯」のプロアマ戦に出場するため練習場に姿を見せた6月1日の光景である。
「以前から会長にと打診されていたんだけど、『そんな器じゃない』と固辞してきたんですよ。でも、私も歳をとったんだね。自分にできることはゴルフ界への恩返しかなと思えるようになった」
国内男子ツアーの人気凋落は深刻だ。年間試合数は、1983年の46試合をピークに年々減少、今年は26試合。38試合ある女子ツアーの盛り上がりとは対照的だ。危機感を募らす男子ツアー選手会からの強い要望もあり、就任を受諾した。
「私が会長になったからスポンサーが一気に増えるなんて甘いものじゃない。皆で一丸となって改革していかなければならない」
青木の決断は言葉だけではなかった。会長になるや役員を一新、尾崎将司(69)の特別顧問就任を決め、丸山茂樹(46)を新設の相談役に据えたほか、中嶋常幸(61)への打診も検討している。往年の名選手が青木のもとに集まる形となるが、主役は若手を含む選手自身だと考えている青木が掲げた理念は「人を育む」ことだった。
「私の仕事は選手の意識を変えることです。プロとしての矜持を持ち、ゴルフへの闘争心を前面に出してもらいたい。そのためにコースセッティングも熟慮すべき。ナイスショットした選手にはチャンスというご褒美を、ミスショットした選手にはピンチというペナルティを課すということです」
青木がコースセッティングを協議し、全ホールのグリーンでカップを切る位置を指示した「日本ゴルフツアー選手権」。彼の言葉通りトータルではアンダーパーがわずか2人という波乱の展開となった。また、この大会では、青木の発案によってプロアマ戦で全員同じティから打つという試みが初めて導入された。
「プロの豪快なドライバーショットを楽しんでもらいたいので、18ホール中4ホールをプロがトーナメントと同じティから打ち、残りの14ホールはアマと同じティから打つことにしました。第2打地点に来るとプロとアマチュアの飛距離の差がわかるようにしたんです。これは好評で、嬉しかったですねえ」
もちろん青木自身もプロアマ戦に参加し、愉快な話でゲストを楽しませていた。ホールアウト後、主催者のトップとしてパーティで挨拶。さらにその後、記者会見に臨んで報道陣に「よろしくお願いします」と頭を下げる。