申請することで国や自治体からもらえる「給付金」。ひと口に「給付金」といっても、実際には「助成金」「補助金」「手当」なども給付金に含まれる。さて、これらの違いは何だろう?
「これらに厳密な区別はなく、法律用語というわけでもありません。給付金や手当は、ある目的のために現金給付される制度。また、補助金や助成金は、何かを購入した費用のうちの何割かのお金が戻ってくる制度を示すことが多いですね。いずれも主に国や地方公共団体などから支出されるお金で、明確に決まっているわけではありません」
こう説明するのは『申請するだけでもらえるお金』(幻冬舎コミックス)などの著者で、社会保険労務士の井戸美枝さん。
国民の生活をサポートするとともに、国や自治体が目指す方向に導くために税金を投入して行っている制度だが、申請しないともらえないため、多くの人がもらい損ねているともいう。
例えば東京23区の場合、区外から区内に転入して申請すれば、引っ越し費用や数年間の家賃補助が受けられ、特に子育て世帯には、金額の上乗せをしてくれるところも多い。これは、生活コストの高さを敬遠して郊外に転居されるのを防ぎ、都心の居住者増加を狙ってのものだ。
近年、補助が手厚くなってきたのが、少子化対策としての出産・育児関連の給付金だ。東京都渋谷区が全国の自治体に先駆け、出産を控えた妊婦に「ハッピーマザー手当」5万円の支給を開始したのは、2006年のこと。当時をよく知る区議会議員はこう語る。
「2004年の合計特殊出生率で、渋谷区は全国最下位になったんです。そこで、もっと安心して子供を産んでもらうにはどうしたらいいかと考える中、妊婦さんが受ける13回の妊婦健診のうち、当時の渋谷区では3回分の補助しかしていませんでした。そこで、その差額も補助しようと、1回5000円×10回分の5万円を手当として支給すことにしたんです」
この取り組みは、全国で注目を集め、他の自治体にも広がり、現在では全13回分の補助が国から支給されるようになった。その結果、全国や東京都に比較して渋谷区の出生率は低いものの、2000年から2014年までの10年間で0.32ポイント上昇するなど効果を発揮。現在は「ハッピーマザー出産助成金」と名前を変えて、子供1人につき10万円を支給している。
※女性セブン2016年6月30日号