ピアニストとしても活動する元AKB48の松井咲子がFX(外国為替証拠金取引)を学ぶシリーズが、待望のセカンドシーズンに突入! FXでお馴染みの通貨が、どんな文化的背景を持っているのかを毎回探っていきます。第1回目に取り上げる通貨は『ユーロ』。お相手は、難しい内容もソフトな語り口で分かりやすく解説してくださるセントラル短資FX代表取締役・松田邦夫さん。きっと投資のヒントが見つかるはず。
松井:私は去年、お仕事で初めてヨーロッパのドイツ、ポーランドに行ってきました。ポーランドは今、EU(欧州連合)の大統領を出しているのにユーロを使っていないので、現地で両替をしないといけないとか、なかなか複雑だなと思いました。
松田:「変奏曲」シリーズの第1回目としては、やはり文化の多様さを象徴しているユーロから始めるのがいいでしょう。現在28か国が加盟しているEUは、「二度の大戦争の惨禍を繰り返すまい」との強い信念を基に、戦後間もない時期から半世紀以上の長い時間をかけて、統合の努力が重ねられてきたものです。でもその中でユーロを使っているのは19か国です。使っていない国の代表が英国であり、さきほどのポーランドもそうですね。
松井:しかも、2年ほど前にはギリシャがユーロから抜けるとかで大騒ぎになったこともありました。ユーロは、本当にドルと並んでFX投資家にとって魅力的であり続けられるのでしょうか?
松田:確かにユーロに加盟していない国々、例えば、米英やわが国などではユーロの将来性に懐疑的な見方があるのも事実です。また、最近、中国の人民元が国際通貨としての地位を向上させるなど、これまでの先進国中心の国際通貨制度が大きく変わっていくことも間違いないでしょう。
それでも私自身、ユーロ圏に長く暮らして、政策担当者などと何度も話した経験を踏まえて申し上げると、彼らの「何としても統合を成功させなければという意志と、ブラッセル、フランクフルトなどにいる当局者たちの危機に対処する能力と知恵の蓄積は、域外の私たちが想像するよりはるかに強い、という印象をもっています。
松井:それはなかなか聞けない「現地レポート」ですね。でも、EUも欧州中央銀行(ECB)も、どうしてトップは経済が一番強いドイツの人ではないのでしょうか?
松田:いいご質問です(笑)。これには、いろんな政治的な思惑が働いています。「人口も経済も一番のドイツがそうした重要な機関のトップに就いて反発を招くと、統合にはマイナスではないか」というためらいが、ドイツ以外の国にも、またドイツ人自身にもあります。ですから、EUの大統領は初代がベルギー人、2代目がポーランド人と、経済的には小国の人がなっていますね。
松井:なるほど、そういうことですか。ECBの総裁も「スーパーマリオ」とか言われているマリオ・ドラギ氏でしたよね。
松田:そのニックネームが出てくればたいしたものですよ(笑)。ECBの総裁ポストを巡っては、もっと大国間の駆け引きが露骨で、関係者の間で「通説」とされているのは、「ドイツはユーロ圏の中央銀行を、それまでヨーロッパ最強だったドイツの中央銀行のあった(今もある)フランクフルトに招致する代わりに、トップはオランダ人、フランス人、イタリア人(前述のドラギ氏)に譲るけれども、大事なポストはしっかり確保している」というものです。
松井:それも全く知らなかったお話です。EUの本部があるのが小国のベルギーというのも、そんな関係でしょうか?
松田:とても鋭い目の付けどころですね。交通の要衝で、英独仏のどの国にも近く、小国なのにいくつもの言語が使われているというインターナショナル性もポイントでしょうね。
※マネーポスト2016年夏号