北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長がキューバのラウル・カストロ国家評議会議長に米朝首脳会談の仲介を依頼したとの見方が出ている。北朝鮮の朝鮮中央通信によると、金英哲副委員長が率いる朝鮮労働党代表団が5月下旬、キューバの首都ハバナを訪問、カストロ議長と会見し、金委員長の親書を手渡した。
議長は「北朝鮮との協力関係をより強化、発展させることは、キューバ共産党と政府の不動の立場だ」と述べて両国の友好関係を強調。そのうえで、議長は金委員長について「(祖父の)故金日成主席の姿そのものだ」と指摘し、「(親書の)書体を見ても英知と情熱に満ちた人物であることが分かる」と讃嘆した。
今回の北朝鮮代表団は5月初旬の朝鮮労働党の第7回党大会後、初めて海外諸国に派遣するもの。代表の金副委員長も党中央委員会書記局書記(対南担当)や党統一戦線部長などの要職を務めるなど、金委員長の「懐刀」と呼ばれるほど信頼が厚い最高幹部の一人で、金委員長が今回のキューバ訪問をいかに重視しているかが分かる。
「金氏はカストロ議長に宛てた親書のなかで、オバマ米大統領との米朝首脳会談の橋渡しを要請した」と北京の外交筋は明かす。
さらに、北朝鮮は対米関係改善に向けた動きを加速している。北朝鮮の国連代表部次席大使を務めた韓成烈氏ら北朝鮮外務省で対米関係を担当する幹部職員が5月末開催のストックホルム国際平和研究所(SIPRI)の国際セミナーに出席し、クリントン政権時のピカリング元国務次官と接触した。
「スウェーデンの米国大使館は北朝鮮との対外接触窓口となっていることから、韓氏らは現役の米国務省幹部と非公式に協議する可能性が高い。金委員長はこれらの急速な対米接近によって、自身の威信や北朝鮮の国際的な認知度を高め権力基盤を強化するとともに、対米関係が悪化している中国をけん制する狙いがある」と同筋は指摘する。