6月15日、メガバンクの三井住友銀行が、秋田県の農業法人などと新会社を設立し、米の生産を開始すると発表したように、いま、“畑違い”の異業種から農業にチャレンジする企業が急増している。
NTTドコモ、小田急電鉄、スズキ、日立キャピタル、JR九州……こうした大企業のみならず、地方の中小企業でも新規ビジネスの要として農業を掲げるケースが相次いでいる。参入企業数は1898社(2015年6月末)。2008年は400社あまりだったので、7年間でじつに4倍以上に増えた。
なぜ、異業種がこぞって農業を始めるのか──。大きなきっかけは2009年、さらに今年4月に改正された農地法により、農作業従事者の数や農地を所有できる法人の要件が大幅に緩和されたことにある。つまり、本格的な農業ビジネスのハードルが低くなったわけだが、「自社都合」で足を踏み入れる企業も多いという。
農業参入コンサルタントで、農テラス代表取締役の山下弘幸氏が話す。
「いま、団塊の世代より下の人たちも次々と定年ラッシュを迎え、従業員に再雇用の場を提供したいと考える企業は多いですし、30代、40代の子息を持つオーナー経営者の事業継承も盛んに行われています。そんなとき、既存のビジネスだけでは過当競争に陥って生き残れないかもしれないと危機感を募らせる中で、にわかに注目を浴びているのが農業です。
農業は国も力を入れて改革に乗り出している分野。そのうえ今後はTPP協定の影響で国際競争力も激化してきます。国内マーケットだけでなく、世界の農業がボーダーレス化することで、逆に伸びしろのある産業だと期待する向きが多いのです」
しかし、〈人もカネも余っていて、何となく儲かりそうだから〉などと安易な理由で参入して成功するほど農業は甘くない。山下氏によれば、「参入企業の8割はうまくいっていない」という。
では、失敗する企業にはどんな共通点があるのか。山下氏に3つ挙げてもらった(以下、「」内は山下氏コメント)。