ライフ

末期癌の医師・僧侶 「宗教は阿片」の意味は

医師・僧侶の田中雅博氏

 2014年10月に最も進んだステージのすい臓がんが発見され、余命数か月であることを自覚している医師・僧侶の田中雅博氏による『週刊ポスト』での連載「いのちの苦しみが消える古典のことば」から、カール・マルクスの「宗教は人民の阿片である」という言葉の意味についてお届けする。

 * * *
「宗教は阿片」はカール・マルクス(1818~1883)の有名な言葉です。『ヘーゲル法哲学批判序説』で彼は当時のドイツ人民が宗教聖職者と貴族によって支配されている状況を批判しました。批判とは「良いものを選ぶ」という意味で、非難とは違います。

 周知の通り、マルクスの著作は後に共産主義革命を起こしました。マルクスが思い描いた社会は共産主義という民主主義でした。しかし、その後の歴史では共産圏は官僚主義となり、むしろ資本主義の国家が民主主義に近い形になりました。最近は「世界がもし100人の村だったら」が指摘するように資本主義にも限界が来ています。今後のインターネットによる情報拡散は民主主義の実現に貢献するでしょう。

 さて、マルクスは「宗教は阿片」と表現することで、政治を病気の治療に見立て、阿片を比喩的に用いました。要約すれば、「痛みの原因が治せるのに、それを治さずに、痛み止めの阿片だけ与えている。今の政治はそれと同じだ。貧困という病気の原因を治さずに、それを放っておいて、対症療法としてキリスト教という宗教を与えている、それは良くない」と言っているのです。

 つまり、貧困に対して、労働に賃金を払うという根本的な解決法を取らずに、代わりにお金に換算できない価値である宗教を与えていたということです。

関連記事

トピックス

再ブレイクを目指すいしだ壱成
《いしだ壱成・独占インタビュー》ダウンタウン・松本人志の“言葉”に涙を流して決意した「役者」での再起
NEWSポストセブン
来春の進路に注目(写真/共同通信社)
悠仁さまの“東大進学”に反対する7000人超の署名を東大総長が“受け取り拒否” 東大は「署名運動について、承知しておりません」とコメント
週刊ポスト
司忍組長も傘下組織組員の「オレオレ詐欺」による使用者責任で訴訟を起こされている(時事通信フォト)
【山口組分裂抗争】神戸山口組・井上邦雄組長の「ボディガード」が電撃引退していた これで初期メンバー13人→3人へ
NEWSポストセブン
『岡田ゆい』名義で活動し脱税していた長嶋未久氏(Instagramより)
《あられもない姿で2億円荒稼ぎ》脱税で刑事告発された40歳女性コスプレイヤーは“過激配信のパイオニア” 大人向けグッズも使って連日配信
NEWSポストセブン
俳優の竹内涼真(左)の妹でタレントのたけうちほのか(右、どちらもHPより)
《竹内涼真の妹》たけうちほのか、バツイチ人気芸人との交際で激減していた「バラエティー出演」“彼氏トークNG”になった切実な理由
NEWSポストセブン
ご公務と日本赤十字社での仕事を両立されている愛子さま(2024年10月、東京・港区。撮影/JMPA)
愛子さまの新側近は外務省から出向した「国連とのパイプ役」 国連が皇室典範改正を勧告したタイミングで起用、不安解消のサポート役への期待
女性セブン
チョン・ヘイン(左)と坂口健太郎(右)(写真/Getty Images)
【韓国スターの招聘に失敗】チョン・ヘインがTBS大作ドラマへの出演を辞退、企画自体が暗礁に乗り上げる危機 W主演内定の坂口健太郎も困惑
女性セブン
第2次石破内閣でデジタル兼内閣府政務官に就任した岸信千世政務官(時事通信フォト)
《入籍して激怒された》最強の世襲議員・岸信千世氏が「年上のバリキャリ美人妻」と極秘婚で地元後援会が「報告ない」と絶句
NEWSポストセブン
氷川きよしが紅白に出場するのは24回目(産経新聞社)
「胸中の先生と常に一緒なのです」氷川きよしが初めて告白した“幼少期のいじめ体験”と“池田大作氏一周忌への思い”
女性セブン
多くのドラマや映画で活躍する俳優の菅田将暉
菅田将暉の七光りやコネではない!「けんと」「新樹」弟2人が快進撃を見せる必然
NEWSポストセブン
阪神西宮駅前の演説もすさまじい人だかりだった(11月4日)
「立花さんのYouTubeでテレビのウソがわかった」「メディアは一切信用しない」兵庫県知事選、斎藤元彦氏の応援団に“1か月密着取材” 見えてきた勝利の背景
週刊ポスト
騒動の発端となっているイギリス人女性(SNSより)
「父親と息子の両方と…」「タダで行為できます」で世界を騒がすイギリス人女性(25)の生い立ち 過激配信をサポートする元夫の存在
NEWSポストセブン