1946年、長谷川町子氏が福岡の地方紙『夕刊フクニチ』に連載を開始した漫画『サザエさん』。1969年にフジテレビ系でアニメ放送がスタートし、今でも「国民的アニメ」として不動の人気を誇っている。そんな『サザエさん』にまつわる様々なエピソードを紹介しよう。(2016年6月19日更新)
アニメとは異なる原作時の設定
サザエさんは元出版社勤務
現在は専業主婦のサザエさんだが、以前はさまざまな仕事に就いていた。長谷川町子美術館学芸員の相澤弘子さんはこう語る。「知人の紹介で『ハロー社』という出版社に勤め、婦人警官の体験取材や作家さんの原稿取りなどをしていました」。また、探偵会社で働く話もあるという。
タラちゃんは女の子説もある
驚いたことに、タラちゃんは女の子説もある。連載途中から登場したタラちゃん。1951年4月の朝日新聞の『サザエさん』告知記事で「タラちゃんという女の子があり」と記載されているが、「これは新聞広告が間違えたという説が有力です」(相澤さん)
タラちゃんに妹がいた!幻の「ヒトデちゃん」
「漫画読本という雑誌の企画で、10年後のサザエさんが描かれています。そこで1度だけ“ヒトデちゃん”というタラちゃんの妹と思われるキャラクターが描かれています」(相澤さん)。ヒトデちゃんが登場した『漫画読本』(文藝春秋)は1954年12月に刊行されている。
イクラちゃんの名は実はチドリだった
ノリスケとタイ子の子供の名前が「イクラ」というのはアニメならではの設定だ。1964年2月24日の朝日新聞を見ると、家族紹介の画でタイコが抱きかかえる子供は「チドリ」の名がふられている。「連載していた朝日新聞の特別企画で“家族構成を教えてほしい”と読者から質問があり、『チドリ』という名前で紹介されています。原作では、ノリスケさんの子供の名前や性別はハッキリと描かれていません」(相澤さん)
タマ以外の磯野家のペット 犬のエルザ、リス、カメなど
磯野家のペットといえば猫のタマがおなじみ。アニメ版でも、タマがレギュラーメンバーとして登場している。しかし、原作では、タマ以外のペットも登場しているのだ。「猫の“ミー公”や、“エルザ”“ジョン”“太郎”という名前の犬。ほかにもリス、金魚、カメなど、たくさんのペットを飼っていました」(相澤さん)
磯野家のトリビア
サザエさん 作者が海岸を散歩していたから海産物の名前に
『サザエさん』といえば、登場人物全員が海産物にちなんだ名前で知られている。「町子は3人姉妹で、病気がちの妹の健康のためによく海岸を一緒に散歩していました。それで名前が全て海産物になったんです」(相澤さん)
テーブルはちゃぶ台からダイニングテーブルに
長谷川氏は『サザエさん』に時代のトレンドを入れながら連載を続けた。「家のテーブルはちゃぶ台だったのが、ダイニングテーブルになりました。冷蔵庫も氷から電気になりました。1970年代には公害問題も取り上げています。新聞連載の漫画だからこそ、時代を入れなければいけないと考えていたのだと思います」(相澤さん)
波平の双子の兄・海平 フネが間違えるほどそっくり
波平には、福岡県に住む一卵性双生児の海平がいることは有名だ。「妻のフネさんでさえ間違えてしまうほどそっくりです」(相澤さん)。サザエが丁寧に来客である海平に挨拶をしていたら、フネさんが「いやだ!! ふざけないでくださいよ!」と笑いながら海平をポンと叩くシーンも原作には登場した。
磯野家の先祖におはぎを38個食べ大評判になった武士が存在
磯野家の先祖には、磯野藻屑源素太皆(いそのもくずみなもとのすたみな)という武士がいる。「姿は波平さんにそっくりで、おはぎを38個食べて有名になりました」(相澤さん)。磯野家でもおはぎを食べるシーンがたびたび描かれるが、おはぎ好きは血筋なのかもしれない。
マスオさん 30代の正社員で係長だからスピード出世といえる
「マスオさんは正社員ですし、30代で係長です。日本労働組合総連合会のレポートによると、劇中のマスオさんとほぼ同じ年令だと思われる、男性大卒35~39歳においては部長級がすでに1.1%、課長級が9.3%いるものの、係長級は15.9%、他役職が9.7%となっており、非役職者は64.1%です。実はスピード出世だということが言えます」(作家、人材コンサルタント・常見陽平氏)
ノリスケはクズどころか真の勝ち組説
「ノリスケは出版社勤務で、売れっ子作家の担当編集者です。仕事はけっして楽ではないでしょう。しかし、ストレスとは縁がなさそうです。勤務中に親戚の家で昼寝するなど、仕事にのめり込み過ぎないのがその秘訣でしょうか。いつもノンキに生きているノリスケは、クズどころか真の勝ち組と言っていいでしょう」(コラムニスト・石原壮一郎氏)
一家の30年後をシミュレーションした本が話題に
30年後 41歳で実家に戻ったカツオに難題が
『サザエさん』一家の30年後をシミュレーションした新書『カツオが磯野家を片づける日』が話題を呼んでいる。舞台設定はこうだ。20XX年、アニメでは54歳だった波平が84歳で他界した。妻のフネは認知症の症状が出始め、磯野家はゴミ屋敷と化してしまう。そして41歳になって地方赴任から戻ってきた長男のカツオが“実家の片づけ”という難題に直面する。
磯野家30年後シミュレーション 世田谷の自宅相続税は?
片づけに加え、相続も難問だ。サザエは「相続税ってお金持ちの話で、うちは関係ないんじゃないの?」と呑気に構え、カツオもそう考えていた。しかし、2015年1月の法改正が磯野家に立ちはだかる。磯野家の場合5400万円を超えた分が課税対象となる。築50年のボロ家とはいえ、磯野家の土地評価額は1億2000万円。「1億2000万円-5400万円=6600万円分に対する税金を払わなきゃいけないの?」とカツオは呆然とする。
磯野家の30年後「片づけ業者に任せればいい」に待った!
四十九日までには部屋を綺麗にしたいと思っているカツオだが、相変わらずサザエとワカメは非協力的で、しまいにはサザエが「ゴミばっかりなんだから早く処分しましょうよ。今はやってくれる業者もあるんだし」と言い出す。カツオもそれで仕方ないかと首をタテに振る……。アニメのなかで、波平は趣味で骨董の壺を買うものの目が利かず、家族のヒンシュクを買ってばかりいた。しかし、家族も詳しくはないわけで、中にはお宝が眠っている可能性があるのだ。