女性がSNSで公開する自撮りといえば、キレイに可愛くみえる、こだわりの一枚を披露するのが定番だった。ところが、2016年になってから、犬のコスプレをしたり顔を変形させる変顔アプリによるユニーク、ときにはグロテスクにも見える投稿が増えている。いまや世界共通アクションとなった自撮りに、いったい何が起きているのか。
最近の自撮りは「“盛る”系だけでなく“盛り上がり”系がにぎわいつつあります」とITジャーナリストの高橋暁子さんは解説する。
「美肌効果などを駆使して盛った自撮りもプロフィル用に安定した人気がありますが、それとは別のベクトルで変顔や動物のコスプレ、2ショットで写る2人の顔を交換するなどの加工が人気です。大人が見るとグロテスクに映るようなものもありますが、キモカワイくておちゃめだと、若い女性を中心に好感度が高いですね。これらは、ネットだけでなくリアルでも盛り上がれる便利なコミュニケーションツールとしても広がっています」
米国の10~20代に人気が高いSNS、Snapchatが自撮り加工機能「Lenses(レンズ)」を2015年9月に公開、カメラに映る顔を長押しするだけで、犬の耳と鼻、ピエロ、ホラーメイクや宇宙人のような変顔へ加工できるようになった。これに飛びついたのが、歌手で女優のアリアナ・グランデやマイリー・サイラス、モデルのミランダ・カーなど女性人気が高いセレブたち。彼女たちの自撮りがInstagramへ転載されると、日本にも多くのフォロワーを生んだ。
その後、日本のInstagramで人気が高いローラや水原希子、渡辺直美らが同じように自撮りを加工して投稿すると、日本の若い女性たちの間に変顔アプリとしてSnapchatが広まった。日本での普及スピードが遅いといわれていたSnapchatは、2016年になって急にカメラ機能で認知を高め、今では「スナチャ」の愛称で親しまれている。
現在、変顔写真をつくるためによく使われているアプリには、美肌やレタッチ機能が豊富な「lollicam(ローリーカム)」のスタンプ、犬や猫など動物スタンプが豊富な「SNOW(スノー)」、盛れる写真が撮れると人気を集めた「カメラ360」もファニーステッカーを追加し変顔アプリに仲間入りした。LINEも「LINE egg」という同様の機能をもったカメラアプリを5月26日に公開し、存在感を示そうとしている。
「これまでのカメラアプリでも加工はできましたが、使いこなすには技術やセンスが必要でした。ですが、SnapchatやSNOWなど顔認識機能を利用したアプリを利用すると、アプリの力だけでウケる写真が撮れます。たとえ一歩も部屋から出ない生活であっても盛り上がる写真を投稿できるのです。今は若い子たちが中心ですが、言葉がなくても感覚で楽しめるコミュニケーションとしてリアルな場所でも人気なので、年齢、性別問わずに楽しまれるのではないでしょうか」(前出・高橋さん)
2013年11月にオックスフォード英語辞典で「セルフィー(自撮り)」が「今年の言葉」に選ばれ、2年が過ぎた。自撮りも文化として成熟し、様々なあり方へと変化しているようだ。