金の価格上昇が止まらない。今年1月には1g4100円台だった金の国内価格は、6月には4748円にもなっている(6月10日現在)。これは2000年の平均価格1014円の4倍以上というから驚きだ。
そうした金価格の上昇を受けて、金の売買を手がける田中貴金属工業の店頭は大賑わい。銀座本店の副店長・山田英和さんはこう嬉しい悲鳴を上げる。
「今年に入ってから問い合わせは増えています。日によっては、購入を希望するお客さまであふれ、店舗内の椅子が足りないほどです」
金の上昇トレンドを加速させているのは、何かと話題のマイナス金利政策だという。
「マイナス金利によって預けた側が利息を払うというあべこべな構図が生まれました。これまで金利がつかないのがデメリットといわれてきた金ですが、逆に、“金利がつかないところがいい”と注目が集まった。常識がひっくり返ったのです。日銀はマイナス金利を今後も拡大することを示唆しているので、ますます金の需要は伸びるでしょう」(金投資に詳しい経済アナリスト・豊島逸夫さん)
国内でここまで金価格が上昇するのには、もう1つ理由があると豊島さん。
「アベノミクスへの不安です。1つの法則として“株価が下がると金が上がる”というものがあります。昨年までは株価が上昇していたため、金価格は下がっていましたが、今年に入って株価が下がったので、金価格は上昇していきました」
とはいえ安倍首相が「アベノミクスのエンジンを最大限ふかす」と語るように株価が上がる可能性も。これからも金価格が上昇するかどうか心配にもなるが――。豊島さんはそれに対してこう答えた。
「私は2020年までに、控えめに見ても1gあたり7000円にはなると見ています」
なんと、現在より2500円近くも上がるという予測だ。その根拠は地球上の金の量は一定で、人間の都合で増やせないことと、インドや中国での根強い金人気。
「2015年も、この2国で世界の年間生産量の半分を買い占めています。価格が少しでも下がったら買い増してくるはずです。つまり、金の価格は世界とつながっています。今後、日本の景気がよくなっても悪くなっても、今の傾向は変わらないでしょう」