南海トラフ地震が発生すれば、死者・行方不明者32万3000人、場所によっては高さ25mを超える津波が押し寄せることが想定されている。首都直下型地震でも、死者数は最悪の場合約2万人に上るといわれている。
ほとんど想定されていなかった熊本地震が突然発生したように、日本に住んでいる限り地震から逃れることは難しい。しかし、どの地域がどれだけ危険なのかをある程度事前に知る方法はある。
6月10日、文部科学省地震調査研究推進本部が「全国地震動予測地図」を公表した。日本国内で今後発生する恐れのある地震を予測し、地図化したもので、「今後30年間に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率」などを示している。
この予測地図は、前回は2014年に公表されているが、今回の2016年版は、2014年以降に得られた知見に基づいて、新たに更新されたものだ。注目すべきは、2014年版とは「発生確率」が変わった地域がある点だ。
「2015年4月に『関東地域の活断層の長期評価』が新たに公表され、それを予測地図に反映させたことが、最も大きな変更点となっています。確率が減った地域もありますが、2016年版は2014年版に比べると、軽微ながら総じて確率は上がっている」(文科省研究開発局地震・防災研究課)
断層の長さが80kmを超え、地震発生確率が高まっている活断層と、沈み込んだプレート内で発生する海溝型地震の発生確率を予測する手法も見直された。
結果、南海トラフ沿いの地域では、2014年からの2年間で南海トラフのプレートに加わるひずみが増したことを受け、発生確率が軒並み2ポイントずつ上昇した。
静岡市68%、津市62%、奈良市61%、和歌山市57%、高松市61%、徳島市71%、高知市73%……いずれもゾッとするほど高い数字である。
発生確率の増大という点で最も顕著だったのは、長野県安曇野市だ。2014年版の19.1%から2016年版では29.5%と、実に10.4ポイントも上昇している。
これは糸魚川―静岡構造線断層帯の評価が見直され、断層帯中北部の一部で発生確率が高いと判断されたためだという。
「糸魚川―静岡構造線断層帯中北部での30年以内の発生確率は13~30%、50年以内の発生確率は20~50%となっています」(文科省研究開発局地震・防災研究課)
南海トラフだけでなく、糸魚川―静岡構造線断層帯でも警戒が必要である。
※週刊ポスト2016年7月1日号