舛添要一・東京都知事の辞任表明で走り始めた都知事選挙。自民党からは小池百合子・元防衛相、民進党からは蓮舫氏などの名前が取りざたされている。だが、想定外の「真の隠し球」を首相官邸が握っていると見るのはジャーナリスト・森功氏である。それは人気グループ・嵐の櫻井翔の父親で、「櫻井パパ」こと桜井俊・前総務事務次官のことだ。
「いち早く自ら出馬を否定した櫻井パパを、官邸は最有力候補としてあきらめていない。今回の都知事選のように知名度のある多くの候補の名前が日替わりで出てくる状況では、桜井さんがそのまま飛び出せば選挙までに鮮度が落ちてしまう。だからこそ不出馬表明でいったん火消しする必要があった。
候補者選びで一通りもめた後で、最後に“やっぱり桜井さんにお願いしたい”と出馬を要請する。みんなが消えたとノーマークになっているだけに、出馬となればサプライズ効果は断然大きい」
桜井氏が取材陣に語った「私は情報通信行政をやってきただけの人間ですので、とても、そのような役を果たせるだけの器ではない」という不出馬の意思は偽りのない気持ちだろう。
しかし、自民党内には桜井氏待望論が根強く、同党役員は「最強のカード。使わない手はない。総務省の役人たちも出馬を望んでいる。最終的な判断は参院選後だろうが、安倍総理と菅官房長官が口説けば断われないはずだ」と見る。知事選出馬に向けた“櫻井パパ包囲網”が敷かれていることがわかる。
桜井氏は6月17日で総務次官を退任した。出馬のタイムリミットの都知事選公示日は7月14日が有力だ。
桜井氏をよく知る人物は、「桜井さんは息子の知名度を選挙に利用しようという政界や霞が関の下心を見抜いて嫌な思いをしている」とその心中を代弁するが、桜井氏が出馬要請を最後まで固辞して「生涯一官僚」を貫くのか、それとも安倍政権に“殉じる”形で出馬するのか、その決断ひとつで知事選の景色は大きく変わってくる。
※週刊ポスト2016年7月1日号