芸能

『若葉劇団』三男坊の若葉竜也、死刑囚役の映画は壮絶現場

壮絶な現場だったと振り返る若葉竜也

 高圧的な父と、徐々に精神を蝕まれていく母。人づきあいが不器用な兄はリストラされて社会から孤立し、弟は無差別殺傷事件を起こして死刑囚に――日常のささいな綻びから、思い描いた“平凡な幸せ”は手からすり抜け、家族は無残にも崩壊していく。

 どこにでもありそうな家庭が抱える闇を描く、6月18日から公開されている映画『葛城事件』。死刑囚となる次男の葛城稔を演じた若葉竜也は、「記憶がすっぽり抜け落ちるほどに、壮絶な現場だった」と撮影を振り返る。

「稔になりきれるまで何度でも撮り直し、OKが出る頃には自分がセリフをしゃべっていたかどうかも覚えていないほど消耗していました。稔は精神的に追い詰められた挙句、父親(三浦友和)から足蹴にされ、首を絞められて。どのシーンも苦しかったです…」(若葉・以下「」内同)

 劇中では死と相反する生の象徴として食事が重要な意味合いを持ち、家族で最後の晩餐を語り合う場面がある。死刑囚の稔にとってのそれは炭酸飲料で、実はこの炭酸にも苦しめられたという。

「炭酸の刺激に弱くて、たまに飲みたくなると氷で薄めて飲むくらいなんです。首を絞められて朦朧としながら炭酸をあおるシーンでは、まさか微炭酸でお願いしますなんて言えずに、陰で地味ながらも必死に格闘していました」

 老舗劇団『若葉劇団』の“チビ玉三兄弟”三男坊としても人気を集めた若葉は、新井浩文が扮する壊れゆく兄の姿に、実の兄たちを重ね合わせたと語る。

「“もしぼくの兄貴だったら”と想像するだけで、どんどん胸がしめつけられました。葛城家では兄弟で比較されることでも悲劇を生みましたが、ぼくは5人きょうだいの真ん中で上とも下とも比較されず、意外と自由に育ちましたね。

 弟よりは兄貴キャラ。妹や弟もぼくに相談してくることが多いんです。嬉しいけど、『ディズニーランドに行くからお小遣いちょうだい』とか言われると、“三男なのに”って毎回腑に落ちないんですけど(笑い)」

 妹の恋愛相談には乗るが、自身の恋バナにはめっぽう弱い。

「さっきも好きな女性のタイプを聞かれたら汗が止まらなくなって、ドライヤーをかけ直しました」

 時には将来についても、熱く語り合うことがあるという。

「家族でそういう話をするのがいちばん照れくさいです。だけどそんな他愛のない日常こそ、家族にとっては大切な時間なのだと、作品を通じて身に染みました」

【若葉竜也(わかば・りゅうや)】
1989年6月10日、東京都出身。演劇界の老舗劇団『若葉劇団』で、1才3か月で初舞台を踏む。キャリアは長く、大胆かつ繊細な演技に定評がある若手屈指の実力派。演技の幅が広く、NHK大河ドラマ『徳川慶喜』や蜷川幸雄『ロミオとジュリエット』など、数々のドラマや舞台で活躍。家庭崩壊を描いた18日公開の映画『葛城事件』では、死刑囚となる凶悪な無差別殺傷犯を演じた。

撮影■中村功

※女性セブン2016年6月30日号

関連キーワード

トピックス

歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
胴回りにコルセットを巻いて病院に到着した豊川悦司(2024年11月中旬)
《鎮痛剤も効かないほど…》豊川悦司、腰痛悪化で極秘手術 現在は家族のもとでリハビリ生活「愛娘との時間を充実させたい」父親としての思いも
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
紅白初出場のNumber_i
Number_iが紅白出場「去年は見る側だったので」記者会見で見せた笑顔 “経験者”として現場を盛り上げる
女性セブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
電撃退団が大きな話題を呼んだ畠山氏。再びSNSで大きな話題に(時事通信社)
《大量の本人グッズをメルカリ出品疑惑》ヤクルト電撃退団の畠山和洋氏に「真相」を直撃「出てますよね、僕じゃないです」なかには中村悠平や内川聖一のサイン入りバットも…
NEWSポストセブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト
イギリス人女性はめげずにキャンペーンを続けている(SNSより)
《100人以上の大学生と寝た》「タダで行為できます」過激投稿のイギリス人女性(25)、今度はフィジーに入国するも強制送還へ 同国・副首相が声明を出す事態に発展
NEWSポストセブン
連日大盛況の九州場所。土俵周りで花を添える観客にも注目が(写真・JMPA)
九州場所「溜席の着物美人」とともに15日間皆勤の「ワンピース女性」 本人が明かす力士の浴衣地で洋服をつくる理由「同じものは一場所で二度着ることはない」
NEWSポストセブン