「学校の成績に一見関係なさそうな、無駄な学びこそ重要」――「京大3兄弟」の長男で学習塾『探究学舎』講師の宝槻泰伸さんはそう言い切ります。
泰伸さんは、『とんでもオヤジの「学び革命」』(小学館)の原案協力者でもあります。同作は、3人の息子を塾も通わせずに京大に進学させた破天荒なオヤジ、翻弄される妻、そして個性豊かな3兄弟を描いた、爆笑あり、感動ありのコミックエッセイ。『女性セブン』の人気連載マンガ『ホーツキさんちのオヤジ』(2015年5月~11月)をまとめた単行本です。
泰伸さんの子どもをやる気にさせ、将来、本当に役立つ知識を身につけさせるための授業が始まります。今回の質問はこちら。
「中学3年生の長女の母親です。うちの子は、とにかく集中力がありません。特に、勉強に関しては皆無です。5分机に向かっただけでイライラしています。娘に集中力を身につけさせるには、どうしたらいいでしょうか?」(40代・主婦)
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集中力は、2つに分けられるのをご存じですか? それは受動的と能動的なものです。
前者は、ゲームで遊んだり、テレビを見たりする集中力です。だらだらしながらでもできるものですね。一方、後者は、自ら一歩踏み出し、段取りを考えて、頭を使います。工作だったり、楽器を弾いたり…。勉強に必要な集中力もこれにあたります。
お子さんに能動的な集中力を発揮する体験をさせてあげてください。「ホーツキ家」のオヤジは、先ほど述べたような工作や楽器のほか、陶芸を3兄弟に体験させてくれました。
オヤジの手法の中でおすすめしたいのが、“ドキュメンタリー系の映画やテレビ番組を見せまくる”というものです。能動的な集中力がなければ、子どもは見られません。
映画だったら、上映時間約3時間の大作『ガンジー』や革命家チェ・ゲバラの半生を描き、前後編ある『チェ』などがいいでしょう。親子で一緒に見てもいいですが、何より大切なことは、子どもに“映像を最後まで見終える”という体験をつくってあげることです。能動的な集中力の発揮体験をさせてあげられたら、いよいよ勉強です。
そのためのポイントは1つ。その子がわかるレベルから始めるんですね。どんどんわかって、さくさく進むと、勉強をずっと続けられるんです。例えば、中3なのに中1の数学の途中からわからなくなっていたとしたら、わかるところまでさかのぼって勉強させてください。学校の勉強はその間、放っておいてもいいのです。中1の数学がわからないのに、中3の数学の勉強をしても意味がありませんから。
そして、あれこれ手を広げず、まずはいちばん苦手な科目だけに絞って勉強すれば、やがてきちんと追いつきます。
1日2時間の勉強を3か月すると180時間にもなります。しかも、自分のペースでできるのですから。
5分も10分も勉強ができない子を、1時間も2時間も勉強できる子に変えるためには、まず「あなたはできるんだ。これさえやればできる」というようなマジックをかけることです。
親ができなかったら、マジックをかけてくれる家庭教師や塾を探せばいいと思います。
※女性セブン2016年6月30日号