韓国ネットユーザーは、日本叩きに躍起だが、その攻撃対象は日本人に限らない。熊本地震への義援金寄付を表明した元慰安婦もまた、彼らの激しいバッシングに晒されていた。
熊本地震発生後の4月18日、韓国・朴槿恵大統領は安倍晋三首相に見舞いの電報を送り、支援の意思を表明した。4月22日には支援物資を乗せた韓国軍輸送機2機が熊本空港に飛来。ミネラルウォーターなど総額10万ドル相当の救援物資が提供された。
民間では、大韓航空がミネラルウォーターを提供したほか、アシアナ航空が毛布1000枚と義援金1億ウォン(約923万円)を寄付するなどしている。
そうした中、韓国では元慰安婦による募金活動が大きなニュースとなった。活動に参加したのは、金福童さん(90)と吉元玉さん(87)。2人は旧日本軍に慰安婦として強制連行されたと主張し、日本政府に対し問題の解決を訴え続けている。
金さんと吉さんは、毎週水曜に韓国の日本大使館前で行われる抗議集会にも参加し、昨年12月の慰安婦問題日韓合意を批判してきた。
そんな彼女たちが、日本への寄付を呼びかけたのはなぜか。4月20日に行われた集会で金さんは、
「私たちは日本国民と戦っているのではない。日本には私たちを助けてくれた人も多く、黙って被害を見ていることはできなかった」
と、集会に参加した人たちにも募金を呼びかけた。
2人は韓国の慰安婦支援団体「挺対協」(韓国挺身隊問題対策協議会)を通じ、合計130万ウォン(約12万円)の寄付を表明したが、これに噛みついたのが韓国のネットユーザーである。ネットの掲示板には、彼女たちを強い口調で批判する書き込みが溢れていた。
〈寄付をしたところで日本の連中は感謝などしない〉〈被災した強姦犯や殺人犯を助ける必要はあるのか〉〈物乞いが強姦した金持ちに寄付するようなものだ〉〈余計なことはするな。茶番だ〉
また韓国では、元慰安婦の寄付を「慰安婦支援団体が主導する政治パフォーマンス」と見る向きも多く、〈日本に謝罪要求をしながらなぜ寄付をする?〉という書き込みも見受けられた。
一方、日本のネットにも、〈見返りを要求する薄汚い韓国人の寄付はいらない〉などとする酷い書き込みが散見されたが、「強制連行はなかった」という歴史的事実を追究することと、熊本への人道的見地からの支援の評価を混同して考えるべきではないだろう。韓国のネットユーザーと同じ過ちをしてはならない。
※SAPIO2016年7月号