野菜や魚には季節がある。出荷が始まる「走り」、食べ頃の「旬」「盛り」、終盤の「名残り」…。栄養価は最大、価格は最安となる旬~名残りにかけての“最旬”食材を楽しむコツを、料理研究家の松田美智子さんが、いまが旬の「そら豆」について解説する。
そもそもそら豆とはどんな野菜なのだろうか?
さやが空に向かってつくため「空豆」、さやの形が蚕に似ていることから「蚕豆」とも呼ばれる。「天豆」と表記することもある。未熟な豆を食用にするいんげん豆の一種で、ヨーロッパには紀元前5000年ぐらいから存在する、世界最古の農産物。紀元前2000年ぐらいに中国に渡り、四川で栽培が始まり、日本へは8世紀頃に渡来。インド僧・菩提仙那豆が行基に送ったのが始まり、との説もある。豆板醤の“豆板”は干したそら豆のこと。
完熟したそら豆には、炭水化物の代謝に不可欠なビタミンB1はじめ、B2、B3や抗酸化作用のあるビタミンCが含まれ、食物繊維やむくみを解消するカリウムも豊富。美肌とダイエットの心強い味方。
鮮度が命ともいわれるそら豆。さやのない状態だと、3日程度で急激に鮮度が下がる。購入するなら、さやつきで、表面にうっすらと産毛があり、実の形が均等なものを。
「さやに艶と弾力があり、実の形がくっきりと見えているものを選びましょう。店頭に並んだばかりの新鮮なものなら、さやごと食べられますよ。
そら豆に限らず青ものは、店頭に並ぶ頃には水分が失われています。しばらく水に放すと張りが戻り、旨みが増します。お肌と同じですね」(松田さん)
そら豆は煮物やグリルにするとおいしくいただける。
「そら豆の季節になると、子供の頃、祖父が爪のところを薄くそいでゆでたてにすぐお塩して食べさせてくれたことを思い出します。そら豆は栄養価が高いですし、昔はちょうどいい子供のおやつにもなったのね。
さやの皮がしわしわになるほどしっかり焼いていただくのは、家庭だからできること。旨みがさやの中にギュッと濃縮されて特有のにおいも和らぎ、ちょっとねっとりとした食感がクセになります」(松田さん)
■そら豆のグリルのレシピ
【1】そら豆適量はさやごと薄い塩水に30分つけて水を吸わせ、みずみずしい状態に戻す。
【2】そら豆をあらかじめ熱しておいた焼き網にのせ、オリーブオイルを刷毛で塗って10~15分、焦げ目がつき、さやがくたっとするまで焼く。
※女性セブン2016年6月30日号