7月に行なわれる東京都知事選挙で民進党では、蓮舫代表代行の出馬待望論が高まっている。一方、自民党の候補者選びは首相官邸、東京都連、そして“五輪村”と呼ばれる東京五輪組織委員会サイドなど複数のルートで行なわれている。
都連会長の石原伸晃・経済再生相が後任都知事候補の条件として、「東京五輪・パラリンピックを任せられる人」と語った。明らかに東京五輪組織委員会会長で“五輪のドン”森喜朗・元首相を意識した発言だ。また、自民党による人選を迷走させているもう一人の「ドン」が“都議会のドン”と呼ばれる内田茂・元都議会議長である。
そこで森氏の影響下にある“五輪村”から浮上したのが知名度の高い元五輪メダリストたちの名前だ。
女性アスリートではシンクロナイズドスイミングの小谷実可子氏、マラソンの有森裕子氏、今回の参院選に自民党からの鞍替え出馬が濃厚な柔道の谷亮子氏も「都知事選出馬に意欲」と見られている。しかし、そうした名前を聞かされた自民党重鎮は、「都知事選は東京五輪の聖火ランナー選びじゃねェよ」と苦笑いとともに一蹴した。
「いずれも当て馬。アスリート出身の有力な都知事候補はソウル五輪の背泳ぎ金メダリストの鈴木大地・スポーツ庁長官です。日本水泳連盟会長やJOC理事を経験し、森会長の覚えもめでたい。なんといってもスポーツ庁長官として行政経験がある」(組織委員会関係者)
確かに、鈴木氏は昨年10月に新設されたスポーツ庁長官に抜擢されたが、行政経験といっても長官就任からまだ半年あまりだ。鈴木氏自身、「(長官職を)投げ出すわけにはいかない」と出馬を否定したため、“五輪村”は次なる候補を探している。
こうしたメダリスト優先の都知事候補者探しに不安を募らせた東京選出の自民党議員の間では、ドンに反旗を翻す動きがあるという。
「森会長の気に入る候補といっていたら、勝てる候補など見つからない。蓮舫に先行されてしまう。
そこで東京の有力議員が森会長と距離がある小池百合子・元防衛相に改めて出馬を打診し、官邸内にも官僚を出すくらいならそれに同調しようという動きがある。これを機にそろそろ森氏の影響力を削ぎたいという思惑もある」
本命は「蓮舫vs小池」の女の戦いになるのか。
※週刊ポスト2016年7月1日号