株主総会シーズンになると決まって話題にのぼるのが、社長を含めた「役員報酬」の金額。2010年から1億円超の年収を受け取る役員の氏名開示が義務付けられたことで、業績の振るわない企業のトップには、「もらい過ぎ」批判が飛ぶようになった。
今年、早くも注目を浴びたのはソニーだ。昨年は業績低迷が続き、2年連続の最終赤字に陥ったうえ、上場以来初となる「無配当」になったにもかかわらず、平井一夫社長の年収が3億1590万円だったことが判明。株主らの怒りは爆発した。
ところが、2016年3月期連結決算で税引き後利益が3期ぶりの黒字になり復配も果たすなど業績の回復基調が見られると、それにつられるように、平井氏の年収も5億1300万円と開示後のソニー経営陣では最高額に。ストックオプション(自社株購入権)付与による業績連動分の2億9400万円が大幅増額につながった形だ。
これまで多くの日本企業の役員報酬額は、赤字だろうが黒字だろうが変わらない固定報酬の割合が8割を占めていた。それが近年、3年後の業績目標の達成度合いに応じて自社株を直接付与するなどの「株式報酬制度」を導入する企業が急増。その数は230社に及ぶ。
人事・賃金コンサルティングを手掛ける賃金管理研究所の取締役副所長、大槻幸雄氏がいう。
「株主と企業価値を共有するという意味では、株式報酬は分かりやすい仕組みだと思います。株価が上がれば株主だけでなく役員本人もメリットを享受できますし、ストックオプションとは違い、株式に譲渡制限を設けることで中長期的な経営に責任が持てます」
お手盛りの固定報酬制度を改め、業績連動の比率を高めることで、経営陣のやる気や責任を明確化する。その結果、業績が飛躍的に伸びれば、役員報酬全体も跳ね上がる──。事実、2015年3月期に1億円以上の報酬を受け取った役員は400人を超えた。
賃金管理研究所が上場・非上場企業222社を対象に行った役員報酬調査でも、上場企業を中心に増額改定や役員賞与の支給に前向きな企業は多く、社長報酬を引き上げた上場企業は45.9%に上った。だが、ソニーのように5億円オーバーの社長がごろごろ出てくる状況とは言い難い。
「1億円以上の開示といっても、2億円を超える人はわずかですし、創業社長やプロ経営者、ヘッドハンティングした外国人役員などを除けば、平均額はさほど高くありません。
われわれの調査でも、上場企業社長の平均年収額は前年より増加して6148.2万円。報酬額の決定基準は会社業績を挙げる企業が84.5%と多い一方で、『世間水準』や『従業員とのバランス』など他の要素と併せて判断していることも分かりました」(前出・大槻氏)