2015年度のGDP成長率(1次速報値)はプラス0.8%と、2年連続のマイナス成長はどうにか免れた。しかし、2016年度は再びマイナス成長に陥る可能性があるという。いったいどういうことなのか、経済アナリスト・森永卓郎氏が解説する。
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今春闘の賃上げ率は、自動車や電機など主要製造業の労働組合で構成する金属労協の回答状況を見ると、昨年は平均2200円だった賃上げ額が1100円に半減しています。史上最高益となったトヨタ自動車でさえも、ベースアップ額が昨年の4000円から1500円へ大幅減となりました。
安倍晋三総理の要請に従って各社が大幅賃上げに走った昨年の「官製春闘」の趣は、今年はほとんど見られないのが現状です。
賃上げ額が昨年を大きく下回る中、年金はどうなっているのでしょう。昨年度は0.9%引き上げられた受給額は、昨年度の勤労者の名目手取り賃金変動率が前年比マイナス0.2%となったことを主要因に、物価・賃金によるスライドが行なわれず、昨年度と同額に据え置かれることとなりました。
勤労者の賃金上昇率が半減することに加えて、年金額もまったく増えない。その一方で、物価だけは今後間違いなく上がりそうです。これまでは、日銀の金融緩和による物価押し上げ効果を原油価格の下落が全部相殺し、物価は上がっていませんでした。だが、原油価格はどうやら底を打ったと思われます。
原油価格下落の一因として、米オバマ大統領がロシアにダメージを与える目的で、生産コストが1バレル=40ドルかかる米国のシェールオイル(頁岩油)を30ドルの価格で海外に輸出していたことがあります。だが、米国といえども赤字販売を無期限に続けることはさすがに無理だったのか、原油価格も上昇に転じています。当面は、大きく下落することはないと思われます。
そうなれば、日銀の金融緩和の物価押し上げ効果が現実に発揮されることになるので、物価は年後半から上がっていくでしょう。
賃金も年金も増えない中で物価が上がれば、国民の実質所得はマイナスになることが明白です。実質所得がマイナスという状況下では、GDPの6割を占める個人消費が落ち込むのは確実。したがって、GDP成長率がプラスになることなどあり得ないので、2016年度は再びマイナス成長に転落することが現実味を増したと考えられます。
※マネーポスト2016年夏号