関西地方に住む大野俊二氏(仮名・57)の最近の頭痛のタネは、お隣さんとの関係だ。約20年前に越してきた隣人夫婦とは同年代ということもあり、互いの家を訪問し合う良好な関係を築いてきた。変化が訪れたのは昨年、子供のいない隣人夫婦が熟年離婚してからだった。
「一軒家には旦那だけが残った。道端で会っても目を逸らされ、知らんぷり。ゴミ出しのルールも守らず、指定日以外に不燃物を集積場に投棄する始末」(大野氏)
その程度なら我慢もできたが、深夜、タクシーで自宅前に乗り付けると、翌朝に「眠れない! 静かにしろ!」との張り紙が自宅玄関に貼られていた。昼間に大野氏の妻が家で掃除機をかけていると「うるさい!」と怒鳴り込んで来るなど、モンスター隣人と化し、大野氏は困り果てている。
モンスター化した「クレーマー」には、『ディスペーシング(反同調行動)』と呼ばれるテクニックを使うことで、事態の収拾を図ることができるという。『悩み0(ゼロ)―心理学の新しい解決法―』(ワニブックス刊)の著者・神岡真司氏が解説する。
「『ペーシング』とは、自分の言動を相手に合わせることで共感を得る術ですが、このディスペーシングは、あえて相手と同調しないことで、相手のペースに巻き込まれることを回避するテクニックです。
激昂して早口で捲し立ててくる相手には、ゆっくりとした口調で応対し、自分のペースに引き込みます。この後、“すみません、お怒りですよね”と、相手が怒っている事実を受け止め、謝罪することで、相手の承認欲求が満たされ、冷静な話し合いの糸口がつかめることも多い」
※週刊ポスト2016年7月1日号