高値が続く首都圏の中古マンション市況に転換点が近づいているという。不動産の市況調査を手がける東京カンテイ市場調査部の井出武・上席主任研究員が解説する。
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中古マンション市場は新築マンション市場の影響を受けるため、新築で供給戸数が減少すると、中古に流れる購入者が増える。新築価格が上昇すると、中古価格も連動して上昇する傾向もあり、2015年の首都圏の中古マンションの一戸平均価格は、前年比7.4%増の2910万円と2年連続の上昇となった。
都心部などでは2008年のミニバブル期のピーク時価格を超えて上昇し、割高感が強まっている。平均坪単価も各エリアで軒並み上がっており、東京23区では12区で前年比10%以上の上昇をみせている。
だが、東京23区の中古マンション市場は転換点に差しかかっていると私は考えている。価格は確かに上昇しているが、その動きの陰で、流通戸数に占める「価格改定シェア」(各月の流通戸数のうち、直近3か月間に一度でも値下げを行なった住戸の割合)、価格改定の際にどれだけ価格を下げたのかを示す「値下げ率」がともに上昇しているのだ。
城南、城西、城北、城東のいずれの地域でもこの傾向がみられ、特に都心ほどその状況が顕著である。価格が高すぎて、中古を買いたい人が購入をためらう状況では、価格改定=値下げに動かざるを得ないことがうかがえる。
過去の価格改定シェアと価格の推移を振り返ると、価格改定シェアと値下げ率が大きくなっていく局面が到来したときは、必ずその数か月後に価格が下がっていく。したがって、23区での中古価格はまだ上昇基調にあるが、近い将来、下がる方向に転じていくと思われる。
※マネーポスト2016年夏号